収益不問で投資とリソース活用は自由? 放任主義が生むイノベーション:イノベーションのレシピ(2/3 ページ)
コニカミノルタには、イノベーションのために放任主義が貫かれた部署がある。立ち上げは社外の人材によって行われ、投資や社外との共同開発を自由に行う裁量が与えられている。設立3年にして、新規サービスの開発という目標に向けた活動が製品として形になり始めている。
日本でオープンイノベーションがうまくいかない理由は
ビジネスイノベーションセンターは、外部と身軽に共同研究や技術協力を行う。「一定の範囲内であれば、ビジネスイノベーションセンター単独の判断で投資を認めている。その方がスピーディーに判断できる。もちろん、一定以上の投資なら本社の承認が必要だ」(市村氏)。
一般的に投資を認めるということは相応の売り上げや利益の見込みがなければならないが、「収益については『聞かないでくれ』で通している」(市村氏)という。「日本でオープンイノベーションが難しいのは、すぐに『予算は、売り上げは、利益は』と聞くからだ。ビジネスイノベーションセンターではそれをしつこく問うことはしない。ただし、全ての案件の情報はオープンにしていて、誰でも確認できるようにしている」(市村氏)。
社外の人材でスタートした新組織
ビジネスイノベーションセンターの人員規模は、コニカミノルタに籍を置く社員が70人、投資先のベンチャー企業のエンジニアなどパートナーを含めると120〜130人になる。
ビジネスイノベーションセンターは、各拠点のセンター長を始め、メンバーはコニカミノルタの社外から採用して立ちあがった。東京の拠点は立ち上げから9カ月は1人だけだった。「その後、中途採用で10人増やし、2016年秋にコニカミノルタの社内公募で数名が加わった。外の血だけの組織が混血になったところ」(ビジネスイノベーションセンターの東京の拠点で所長を務める波木井卓氏)。
外の血で生まれた独立独歩の組織ではあるが、コニカミノルタ社内から仲間意識が持たれにくかったのは最初の頃だけ。「ビジネスイノベーションセンターの成果をコニカミノルタとして事業化していくため、ワークショップなどで既存事業に携わるメンバーとの交流が進んでいる。ビジネスイノベーションセンターへの異動希望者も多い。女性や若手が特にやりたがっている」(市村氏)。
ビジネスイノベーションセンター設立から現在までを振り返って、市村氏は「まずは5つの拠点を立ちあげられるか、開発案件を実際に持てるかという3年間だった。案件としては、コニカミノルタの既存事業の延長にあるものもあれば、全く新しいものもあった。現在では100件の案件を抱えている」(市村氏)。
100件の案件の主なテーマはパーソナルアナリティクス、スマートワークスペース、仮想パーソナルアシスタント、スマートロボット、ブロックチェーン、コネクテッドホーム、機械学習、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)など。黎明期で、顧客の行動やビジネスモデルの変革に期待の高い技術を中心に事業開発を進めている。2016年度に入ってから事業化した案件は10件だ。
「案件の中には、なくなる企画や進展がなくなるものもある。これまで既存事業では、ロードマップを立ててからそれに沿って製品を売っていた。ビジネスイノベーションセンターでは、ロードマップを立てても途中でやめることを経験した」(市村氏)という。
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