製造業IoTの本命は5Gなのか、それともLPWA含む非免許通信か:MONOist IoT Forum 大阪(後編)(2/2 ページ)
MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum大阪 IoTがもたらす製造業の革新 〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜」を開催。後編では、ノキアソリューションズ&ネットワークス テクノロジー・ビジネス・ディベロップメント シニアマネージャー小島浩氏の特別講演と、その他の講演についてお伝えする。
IoT時代の製造業のビジネスモデルはどう変化するのか
「MONOist IoT Forum 大阪」では、ここまで紹介してきた基調講演および特別講演に加え、6本のセッションも実施した。その様子をダイジェストで紹介する。
デジタルツインでフィジカルとデジタルの連携を訴えたPTC
PTCジャパンは、「IoT、AR/VR、アナリティクスの複合利用で大胆な業務改革を実現」をテーマとし、IoTやAR(拡張現実)/VR(仮想現実)などのような先進的なデジタル技術により、フィジカルの世界とデジタルの世界の結び付きによる新たな価値について訴えた。同社はCADやPLMなどの設計領域のソフトウェアなどを中心に展開してきたが、2014年にThingWorxを買収しIoT事業に参入。さらに、2015年にはAR(拡張現実)技術を持つVuforiaを買収し、フィジカルとデジタルの世界を融合した新たなモノづくりの姿について提案を進めている。
フィジカルとデジタルの世界を融合することによる価値については、エアバスでの航空機組み立ての作業支援などの実績の他、IoTによるポンプの状態監視で故障予知などを行った事例もある。PTCジャパン 製品事業部 IoT/M2M技術営業部 部長 山田篤伸氏は「2600件発生した故障の内、エンジニアが事前に予測できたものは32件だった。しかし、当社が提供した機械学習を生かした予兆保全では約1600件において事前予測に成功した。完璧とはいえないが、エンジニアが予測するよりも優れた成果を残せた」と語っている。
ISIDはスマートファクトリーにおけるBOPの重要性を訴求
電通国際情報サービス(ISID)は「IoTでスマート接続された工場がもたらすビジネス変革」をテーマとし、スマートファクトリー実現に向けたシステム面でのポイントについて紹介した。
同社ではスマートファクトリー実現に向けて、重要になる5つのシステムとして「PLM」「SLM」「ERP」「MOM」「EAM/HRM」の5つを挙げる。さらに、これに加えて、モノづくりのプロセスを管理する「BOP(Bill of Process)」の価値を訴求。電通国際情報サービス エンジニアリングソリューション事業部 戦略技術ユニット DER推進室 マネージャー 深堀竜也氏は「さまざまなシステム連携が進む中、モノづくりプロセスを最適に管理するBOPの価値が高まる」と述べている。
IoT専用の通信サービスをグローバル展開するボーダフォン
ボーダフォン・グローバル・エンタープライズ・ジャパンは「グローバル IoT活用によるビジネスバリューの実現に向けて」をテーマとし、同社が2013年から続けている「グローバルIoT普及状況調査」の内容を紹介。「76%の企業がIoTを将来の成功に不可欠のものとなる」とした回答や「63%の企業が2017年中に業務向けプロジェクトを開始したい」とした回答などから、「日本での実感と比べてどうだろうか。想像以上に高いのではないだろうか。そういう意味では日本の取り組みは遅れているといえるかもしれない」(ボーダフォン・グローバル・エンタープライズ・ジャパン ボーダフォンIoT IoTジャパンカントリーマネージャー 阿久津茂郎氏)と警鐘を鳴らした。
さらに「『Product as a Service』や『Factory as a Service』の世界が広がる中、産業機器メーカーは全ての機器に通信機能が必須になる。さらに通信機能もグローバルが対象になる」(阿久津氏)とし、ネットワークの重要性を強調した。
サービス化時代の収益化手法を強調したジェムアルト
ジェムアルトは「製造業はセキュアなサービスで稼ぐ時代〜グローバル競争で勝て!ソフトウェアで革新させるものづくり産業」をテーマとし、「製造業のサービス化」に向けた手法について紹介した。
ジェムアルト ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアアプリセールスコンサルタント 前田利幸氏は「IoTによって、製造業のビジネスモデルが変革し、サービス中心のビジネスモデルへとシフトしつつある。もはや装置の先端技術を磨くだけでは勝ち残れない。サービスビジネスにどれだけ注力するかが収益性の違いを生み出す時代になっている」と述べている。さらに、その中で「セキュリティとプロテクション、ライセンシングと利用状況追跡、エンタイトルメント管理などのソフトウェアでの収益化手法が重要になる」(前田氏)と強調した。
IoTアナリティクスライフサイクルの価値を訴求するSAS
SAS Institute Japanは「IoT×コグニティブ技術で品質管理・アフターサービスを強化する勘所」をテーマとし、データ分析を効果的に活用する「IoTアナリティクスライフサイクル」の価値について訴えた。
SAS Institute Japan ソリューションコンサルティング本部 IoTソリューショングループ マネージャー 松園和久氏は「従来ビッグデータなどのデータの蓄積にはデータレイクという表現が使われていたがIoT時代はデータレイクではなくデータリバーだと考えている。ためられたデータだけでなく流れていくデータを瞬時につかんで瞬時に分析して業務に生かすことが重要だ」と述べている。さらに、これらを業務に活用する重要性を語り、コニカミノルタやブリヂストンでの事例を紹介した※)。
※)関連記事:伸び縮みするゴムを最適管理、ブリヂストンが日産2万本のタイヤをAIで生産へ
「The Future of Making Things」を提案するオートデスク
オートデスクは「3Dプリント、人工知能やIoTで生産現場の未来はどう変わるのか」をテーマに、同社が訴求する新たなものづくりの形「The Future of Making Things」を訴求した。特に、3Dプリント技術やAI、IoTなどの技術の発展により、ジェネレーティブデザインやアディティブマニュファクチャリング(積層造形)が大きく進化しており、人間が思いもしなかったモノづくりやモノの形を作り出せるようになってきている。
オートデスク 技術営業本部 Fusion 360 テクニカルスペシャリスト 関屋多門氏は「デザイン(設計)、メイク(製造)、ユーズ(運用)の、モノづくりにおける全ての面が新しい技術により変化しようとしている。この新たな時代におけるモノづくりを効果的なものにするためには新たな基盤が必要になる」と訴えている。
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