5Gは試作競争、次世代産業用ネットワークはイーサネットAVBを活用へ:製造業IoT(1/2 ページ)
日本ナショナルインスツルメンツは「NIトレンドウォッチ2016」を発表した。技術トレンドを年次レポートとしてまとめたもので、今回のテーマはIoT(Internet of Things、モノのインターネット)だ。5G(第5世代移動通信システム)や産業用IoTなどの課題に言及している
日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は2016年1月26日、年次リポート「NIトレンドウォッチ2016」を発表した。NIトレンドウォッチは技術トレンドを取り上げてまとめたもので、2016年で3回目の発行となる。今回のテーマはIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を取り上げ、5G(第5世代移動通信システム)やエッジコンピューティング、産業用IoTなどの課題に言及している。
5Gは試作競争
2020〜2025年にかけて、インターネットに接続するデバイスは500億個を超えるといわれている。データ量が増加するだけでなく、多様なデータを送受信することになるため、超低遅延/超高密度で高い処理速度の5Gがさまざまな業界で待ち望まれている。
日本NI APACマーケティングマネジャー テスト&RF担当の久保法晴氏は、5Gは「通信の歴史の中でも異色なものになる」と語る。多様なデバイスを接続する複合的な技術を包含した例のない規格となるため、5Gの実現に向けて幾つかの有力な通信技術が挙がっている。「効果的かつ現実的で規格に適した技術であることを実際に証明できたベンダーが5Gの通信技術の主導権を握る」(久保氏)という。
現在、各社が5G向け技術の試作や実証実験を急ピッチで進めている。Samsung Electronicsは、FD-MIMO(Full-Dimension Multiple-Input and Multiple-Output)と呼ばれるマルチアンテナ技術のデモンストレーションを世界で初めて行い、4台のエンドユーザーデバイスと基地局での通信が可能であることを示した。既存の基地局のインフラに増設して5Gが実現可能だという。
スウェーデンのルンド大学は、100本のアンテナを使う大規模MIMOで試験を実施した。それぞれのアンテナにFPGAを配置しており、通信の計算をリアルタイムに行える。「アンテナ数を増やすメリットとして消費電力の低減がある。シミュレーションでは証明されていたが、実際に低消費電力であることを示さなければならなかった」(同氏)。
5Gでは非実用的だと見られた通信技術が、プロトタイプの実力によって有力候補に挙がった例もある。Nokiaは商用化が難しいとされた6GHz以上のミリ波帯をターゲットに開発に取り組んでいる。6GHz以上の帯域は通信可能な距離が短く、手でも電波を遮ることができてしまうため、携帯電話の通信ネットワークには不向きだとされてきた。Nokiaはプロトタイプで、73.5GHz帯を利用して10Gbpsの速度でデータの送受信が可能であることを示した。
日本企業も積極的だ。NTTドコモが取り組む無線アクセス技術、NOMA(Non-Orthogonal Multiple Access)は信号を互いに干渉させないことで通信速度を向上する。干渉する信号でも同じチャンネルで複数のユーザーを通信させることを世界で初めて実証した。
技術の主導権争いに勝ち、商用化するためには試作と実証実験が不可欠だ。「理論上で優れていても実物はシミュレーション通りには動かない。実際にモノがなければ研究開発投資や共同開発も進まない」(同氏)ためだ。実証実験の成果を標準化団体が高く評価した例もあるという。
しかし、5G向けの通信技術は「テストヘッドを作るだけでも2〜3年がかりになる。実証実験に至るまでの工程が長すぎて、概念の域を出るのが難しい」(同氏)のが現状。ソフトウェア無線の活用による試作期間の短縮、早期立ち上げと実用性の証明が5G商用化のカギを握りそうだ。
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