5Gは試作競争、次世代産業用ネットワークはイーサネットAVBを活用へ:製造業IoT(2/2 ページ)
日本ナショナルインスツルメンツは「NIトレンドウォッチ2016」を発表した。技術トレンドを年次レポートとしてまとめたもので、今回のテーマはIoT(Internet of Things、モノのインターネット)だ。5G(第5世代移動通信システム)や産業用IoTなどの課題に言及している
産業用イーサネットの次の規格
NIトレンドウォッチでは、産業用ネットワークの次世代規格の1つとしてIEEE802.1 TSN(Time-Sensitive Networking)を有力視している。TSNは、リアルタイム性が求められ車載用でも使われるイーサネットAVBを拡張した規格となる。標準イーサネットのハードウェアを流用しながら、ソフトウェアで遅延時間を1μs以下に抑える点を特徴とする。
産業用ネットワークは業種や工程によって要求される遅延時間が異なるため、リアルタイム性が求められる分野ほど独自規格のバスが多かった。その上位にくる、コントローラー間や産業用ロボットを通信接続する用途で普及しているのが、現行の産業用イーサネットになる。
代表的な産業用イーサネットは、コントローラー間ネットワーク/フィールドネットワーク/モーション制御ネットワークの接続にそれぞれ得意不得意があり、階層ごとに異なるネットワーク仕様となっている。
こうした従来の産業用イーサネットは「異なる規格同士でネットワークを共有しにくいという弱点がある。現場が求めるIT化を実現できず、社内のネットワーク管理者の負担も大きくなってしまう」(日本NI マーケティング部 シニアテクニカルマーケティングマネジャーの岡田一成氏)のが課題となっている。また、帯域幅は最高100Mbpsが上限で、通信速度にも限度がある。
TSNは、こうした従来の産業用イーサネットの課題を解決する次世代ネットワーク規格だ。GEやIntel、Cisco Systems、Broadcom、National Instrumentsのほか、BMWやGeneral Motors、Robert Boschなどが標準化を推進している。TSNは「遅延時間が1μs以下の時刻同期やキビキビとした処理、Gbpsクラスの帯域を実現する。また、有線だけでなくワイヤレスの接続も併用可能になる」(岡田氏)という。遠隔診断や分散した機器の同期でメリットが大きい。
TSNはコストの面でもメリットがあるとしている。産業用イーサネットはASICなど専用ハードウェアを使用するのに対し、TSNは既に量産されているハードウェアを利用できるため、低コストで信頼性が高い。TSNの標準化に向けて「2016年はマイルストーンとなる年」(同氏)だとしている。
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