GPUはこれまでも、そしてこれからもディープラーニングをけん引する:NVIDIA DLI 2017 講演レポート(2/2 ページ)
エヌビディアが主催するGPUを用いたディープラーニングのイベント「NVIDIA Deep Learning Institute 2017」の基調講演に、米国本社NVIDIAの主席研究員を務めるビル・ダリー氏が登壇。ディープラーニングの進化に果たしてきたGPUの役割を強調するとともに、今後もGPUがけん引役になると強調した。
東大・次世代知能科学研究センター長の國吉康夫氏がゲスト登壇
ダリー氏の講演では、ディープラーニングで発展を遂げたAI分野の事例を紹介するゲストとして、東京大学大学院 情報理工学研究科 知能機械情報学専攻 教授の國吉康夫氏が登壇した。
國吉氏は、東京大学が2016年10月に開設した「次世代知能科学研究センター」のセンター長も務めている。同氏は、行動認識や言語翻訳、画像生成、自律的な取材と報道を行うジャーナリストロボット、人間の感覚を持つロボット、人間の脳モデルを基にした赤ちゃんロボットなど、さまざまなAI分野の研究事例を紹介。その上で「AIの技術展開で重要なのは『実世界(Real World)』と『人間(Human)』だ。AIは将来的に全てのものに組み込まれていく。次世代知能科学研究センターでは、AIそのものだけでなく、さまざまな学問との関わりもまとめていくことになる」と述べた。
國吉氏のAI分野に関する事例紹介を受けて、ダリー氏が強調したのが、今後のAIに求められるであろうコンピュータ処理性能の進化である。
同氏は「今後のAIには高い処理性能が求められるが、ムーアの法則は既に終了している。そんな状況下でも処理性能を高められるのはGPUだ」と述べる。
CPUやGPUの処理性能向上を目指す上で、現在最大の課題になっているのが消費電力だ。消費電力を低減できない理由の多くを占めるのが、レイテンシ(遅延時間)を低減するためのスケジューリングによるオーバーヘッド(Overhead)、データ移動によって生じるローカリティ(Locality)である。NVIDIAが今後開発を進めるGPUは、オーバーヘッドやローカリティをCPUよりもはるかに小さく抑えることで、処理性能を高められるようにする方針。「GPUはCPUよりもシンプルであるべきだ」(ダリー氏)。
ディープラーニングを構成するエコシステムについても新たな取り組みも始まっている。今後ディープラーニングの処理性能を高めていく上で、ターゲットアプリケーションから独立したプログラミング(Target Independent Programming)が求められるようになる。そこでスタンフォード大学を中心にオープンソースで開発が進められているのが「Legion Model」だ。プログラミングのロジックと機械学習のマッピングを分離したモデルであり「Legion Runtime」として公開されている。
このLegion Modelを「S3D」と呼ばれる燃焼シミュレーションに適用したところ、並列計算のプログラミングに一般的に用いられるMPI Fortranと比べて、6倍の速度向上を実現できたという。
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