日本の製造業は大丈夫だ! 悔いや反省をバネに前を向く学生たち:車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2016(3)(6/6 ページ)
晩夏の熱い戦い、全日本学生フォーミュラ大会(以下、学生フォーミュラ)から早くも4カ月。最後のピットレポートが年をまたいでしまいました。大変お待たせいたしましたが、お約束の通り4チームの様子を紹介させていただきます。
電動リアウイングの完成が目標
関 リアウイングは可変かな?
東海大学 小川さん はいそうです。ただ、形はできたのですが、まだモーターで制御するまでには至っていません。そこも今回諦めた部分で悔しいです。ちゃんと実証実験をして効果確認を進めます。
関 ストレートでは水平に、コーナリング時には隙間を閉じてと自動制御したいよね。
小川さん はい、DRS (Drag Reduction System)として機能させなくてはいけません。
関 (カウルの「井上ボーリング」のステッカーを見つけて)ボアダウンは井上さんのお仕事でしょ!
小川さん あ、ご存じですか?
関 自分はバイク乗りだし、ホンダビートも愛用していたからもちろん存じ上げています。いいお仕事しますよね!エンジンの写真も撮りたいなぁ。
小川さん では、カウル外しますね。
関 ありがとうございます。エキパイの溶接もきれいですねぇ。これ、チタンですよね?
小川さん そこ、自慢なのです。海外の大会に行っても褒められますし、Facebookに写真をUPするとコメントがたくさん付くし、今回U.A.S GRAZ大学さんに活動場所を提供させていただいたのですが、彼らにも「これはすごい!」といわれてうれしかったです。
関 2017年は排気量が700ccまでになるので、ボアダウンの必要はなくなるし、このコースにはツインエンジンが向いているので活躍を期待しています!
東海大学の最終成績は38位と、前回の33位から若干順位を落としましたが、マシンのポテンシャルはかなり高いものがあります。チームマネジメントをしっかりやって、VツインエンジンとDRSの効果を十分に生かせば上位入賞も十分に可能性があります。2017年が楽しみなチームの1つです。
さて、3回にわたるレポートはお楽しみいただけましたでしょうか? 普段は使わないボイスレコーダーで録音し、それを聞くことを主体に、各チームのサイトやBlog、Facebook Pageでの事実確認、そして主催者から発表されている公式記録などのチェックと、学生フォーミュラのコラム執筆はかなり疲れます。
でも、エンデュランスでドライバーに大声で声援を送るメンバー、ピットで小さな椅子に腰かけたまま眠りこけているメンバー、インタビューに元気に答えるチームリーダーさんなど多くの大学生の姿を見ているとこちらも元気が出ますし、「これからの日本の製造業は大丈夫だ!」と感じることができます。
つたないレポートではございましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。そして2017年9月、私はまた全日本学生フォーミュラ大会の会場を訪れることでしょう。
筆者紹介
関伸一(せき・しんいち) 関ものづくり研究所 代表
専門である機械工学および統計学を基盤として、品質向上を切り口に現場の改善を中心とした業務に携わる。ローランド ディー. ジー. では、改善業務の集大成として考案した「デジタル屋台生産システム」で、大型インクジェットプリンタなどの大規模アセンブリを完全一人完結組み立てを行い、品質/生産性/作業者のモチベーション向上を実現した。ISO9001/14001マネジメントシステムにも精通し、実務改善に寄与するマネジメントシステムの構築に精力的に取り組み、その延長線上として労働安全衛生を含むリスクマネジメントシステムの構築も成し遂げている。
現在、関ものづくり研究所 代表として現場改善のコンサルティングに従事する傍ら、各地の中小企業向けセミナー講師としても活躍。静岡大学工学部大学院客員教授として教鞭をにぎる。
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