伸び縮みするゴムを最適管理、ブリヂストンが日産2万本のタイヤをAIで生産へ:スマートファクトリー(2/2 ページ)
タイヤ大手のブリヂストンは、人工知能(AI)関連機能を搭載した生産設備を主力工場である滋賀県の彦根工場に導入。既に3台を稼働し、2020年までに彦根工場で生産するタイヤの3〜4割を同設備によって生産するとしている。
EXAMATIONが生み出す価値
EXAMATIONは、ICTシステムで得られるデータを活用し「ビッグデータ解析を行い知見を獲得してアルゴリズムを作成」作業と「アルゴリズムを基に生産工程を自動制御する」作業をそれぞれのシステムに担わせることにより、タイヤ成型工程の自動・自律制御するシステムである。具体的には、このビッグデータ分析を行いアルゴリズム生成を行うシステム群を「BIO(Bridestone Intelligent Office)」、生産工程を自動制御するシステム群を「BID(Bridgestone Intelligent Device)」としている。
スマート工場の実現に向けては「データをどこに保管し制御するのか」という点で「クラウドVSエッジ」のような論争も生まれている。EXAMATIONでは、BIOはクラウド側に設置しデータの分析とそこから導かれる最適なアルゴリズムの生成を行う。一方のBIDはエッジ側に設置しEXAMATIONの実際の作業制御を行うという役割分担となっている。BIOとBIDをリアルタイムに連携させて、BIO側が機械学習により1日の中でもアルゴリズムをどんどん変化させていくというような使い方は想定しておらず、作業開始時にアルゴリズムを生成し、作業中は同じアルゴリズムにより生産作業を続けるという方式をとっているという。
センシングと制御により自動化
EXAMATIONは基本的には、人が行っていた工程をそのまま変わらずに行っていることが特徴である。同社は既に2002年には、世界で初めて部材工程から製品検査工程までを全自動化し、生産現場の状況をリアルタイムで把握するネットワーク技術を導入した生産システム「BIRD」を開発。実際に彦根工場で稼働させ日産6000〜7000本の生産を行っているが、こちらは生産プロセスまでICT活用に最適化させている。
EXAMATIONは現行の生産プロセスをそのまま置き換える形となっているため、既存工場の成形工程の置き換えなどが容易に行える。5つの部材をEXAMATIONに運び、トレッドなどの表面部分と、ビードやベルと部分の2つの部材に成形し、これらを最後に組み合わせて1つの生タイヤへと仕上げる。これらを全自動で行っている。
従来人手が要求された品質面での精度などについては、機器に取り付けられたセンサー群と、これらから得られたデータによりBIOで生成されたアルゴリズムによってカバーすることに成功している。
ブリヂストン タイヤ生産システム開発担当 執行役員の三枝幸夫氏は「生産性は2倍に従業員の教育時間は3分の1にすることができた他、品質は15%向上させられている」と成果について述べている。
彦根工場の生産量の3〜4割をEXAMATIONで
ブリヂストン彦根工場では現在フラッグシップ工場としてダントツの競争力を目指す「彦根工場プロジェクト」を推進。約150億円を投じ2020年までに最新鋭の技術と設備で生産ラインを再設計する。この流れの中で2020年までに全体の生産量の3〜4割をEXAMATIONで生産する計画だという。さらに導入についても全導入するの7割については2017年度までに行う。さらに海外工場にも展開。ハンガリー工場とロシア工場でEXAMATIONを採用する計画を示している。
既にEXAMATIONで得られたデータを前段階の部材生産工程などにフィードバックし品質向上を実現する新たな取り組みなども進展。今後はEXAMATIONで得られるセンサーデータを活用し、治工具や原材料、消耗品メーカーなど社外の関連企業と共有し、予防保全サービスを受けられる体制構築などにも展開を広げる方針を示している。
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