国家間バトルはもう十分、加速する政府の枠組み作り:いまさら聞けない第4次産業革命(9)(2/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて分かりやすくお伝えしていきます。第9回はここのところまた激しくなってきた「第4次産業革命による国家間連携」についてあらためてまとめたいと思います。
先進国で進む連携組織間の協力強化
矢面氏は引き続きグーチョキパーツが第4次産業革命の波に乗れるように、さまざまな団体に出入りして情報を集めているようです。
印出さん、こんにちは。何かこの前、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)の会合に参加したら「ドイツの『CeBIT』っていう展示会に出ないか」とか言われたんですけど、知っています?
矢面さん、こんにちは。あら、そんなことがあったの。「CeBIT」はドイツのハノーバーで開催されているIT関連の見本市だけど、2017年は日本がパートナーカントリーね。
そうそう。そんなこと言ってました! 日独首脳会談がどうだとか……。
「CeBIT」は、オートメーションやエネルギーの見本市である「ハノーバーメッセ」から派生し、同じ展示会運営会社ドイツメッセが運営しているIT関連の見本市です。ハノーバーメッセが現場からのインダストリー4.0を紹介している一方で、CeBITではIT側からのインダストリー4.0を紹介する場だといえるかもしれません。
これらの展示会は毎年パートナーカントリーを決めており、2017年のCeBITでは日本が務めます。パートナー国になると専用パビリオンが用意される他、国家の首脳が訪問しドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏と会談するのが通例となっており、その場を生かして経済協力関係の発信がなされることも多くなっています。2017年も安倍首相が訪独することが予定されているようです※)。
※)関連記事:IoTとロボットで世界にアピール、「CeBIT」で日本がパートナー国に
IT関係の見本市なんですね。ジャパンパビリオンとして注目されるのはよいですけど、われわれのような部品メーカーが出展してもいいんですかね?
それこそ、IoTを使ったサービスでビジネスモデルを変えるというようなことにチャレンジするなら、価値はあると思うわよ。グローバルを想定するなら海外パートナーとの関係も築けるし。第4次産業革命は既存の枠組みを超えるところに価値があるもの。
製造業の枠で考えるとCeBITはあまり関係がないといえるかもしれません。しかし「製造業のサービス化」の流れに乗り、データビジネスへと参入するようなことを想定するのであれば関係が出てくるともいえます。
今回のCeBITでの日独首脳会談に対しては、IoTによる第4次産業革命に関する日独協力が話題に上ることが想定されており、ここで何らかの動きが出る可能性があります。さらに、2017年のG20の開催国はドイツです。日本政府はこのG20に向けて、CeBITでの首脳会談で何らかの協力策を打ち出したいという狙いを持ってます。こうした場に参加するということは、国同士のさまざまな最前線の動きを把握することにつながり、そちらで新たなビジネスチャンスを獲得するようなことも生まれるかもしれません。
関係強化が進む日本とドイツ
それにしても、インダストリー4.0に関連する動きでは最近、日本とドイツが協力するような動きがたくさん出ていますよね。
そうね。以前から協力の枠組みはあったけれど、2016年4月に政府間で覚書を結んでからさまざまな動きが具体化したといえるわね。
日本政府とドイツ連邦政府は2016年4月に、IoTおよび第4次産業革命における6項目の覚書を締結しました※)。また同時にそれぞれの主要推進団体であるロボット革命イニシアティブ協議会とプラットフォームインダストリー4.0も6項目で協力していくことを発表しています。これらの活動がさまざまな形で進んでいるといえるでしょう。先述した通り、2017年3月に開催されるCeBITでは日独首脳会談が予定されており、さらにその後、G20もドイツで開催されることになっています。6項目で示されたように、標準化や中小企業のIoT活用に向けた協力も既に開始されています。
ドイツや欧州に販路を伸ばしたり、パートナーを求めたりしたいと思っていたなら、この波に乗るというのも1つの手といえるわよ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.