シーメンスがメンターを45億ドルで買収、「デジタルエンタープライズ」加速へ:製造マネジメントニュース
ドイツのシーメンスは、電子系設計ツールを展開する米国のメンター・グラフィックスを買収すると発表した。
ドイツのシーメンス(Siemens)は2016年11月14日(現地時間)、米国の電子系設計ツールのベンダーであるメンター・グラフィックス(Mentor Graphics、以下メンター)を買収すると発表した。
シーメンスがメンターを1株当たり37.25ドルの現金で取得し、合併する。オファー価格は2016年11月11日のメンターの株価の終値に対し21%のプレミアムを付加した価格で、最終的な企業価値としては45億ドル(約4800億円)になる。メンターの取締役会は、既に合併契約の承認を宣言しており、普通株式の保有者による合併契約の承認と採択を求めているという。
メンターは、半導体設計領域の主要ベンダーであり、EDA(電子設計自動化)ツールに強みを持つ。ICやSoC(システムオンチップ)設計から、自動車向けのエレクトロニクスソリューションまで幅広いソリューションを展開する。
一方でシーメンスは従来の製造機器や制御領域から大きく変革を進めており「デジタルエンタープライズ」として、あらゆる工程のデジタル化とそれによる効率化や付加価値拡大を推進している。
「デジタルエンタープライズ」は、製品のライフサイクルの全ての過程をデジタル化し、さらに製造プロセスと制御システムが連携することで、“デジタル化”により得られる高精度な分析や解析結果をリアルの世界にフィードバックし、生産性を抜本的に改善することを目指したものだ。
これらを実現するためにシーメンスでは以前からデジタル化に向けた買収を積極的に推進。2007年に米国UGSを買収し、デジタル化および製品の企画や設計領域へとカバー範囲を拡大した他、LMSやCD-adapcoなど解析分野のソフトウェアベンダーなどの買収を重ね、デジタル分野のポートフォリオ拡大を進めてきた。今回の買収によりシーメンスではさらにポートフォリオを回路設計領域にも拡大し、カバー範囲の拡大を実現することになる。
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