「照明解析」ってどんなことをするの?:解析エンジニアのつぶやき
客先でCAE導入を支援する解析エンジニアのつぶやき。今回は、需要が高まっているという「照明解析」とはどんなものなのか説明する。
本記事は、CADを快適な環境で使ってもらうソリューション専門街「CADJapan.com」から転載しています。
照明解析ソフトは一般に『「発光体」から「対象物」を通過する光の振る舞い』を光線(ライン)で表現して追跡し、最終的に「目標位置」での照度や輝度を計算するソフトのことを言います。
車のヘッドランプで例えると、「発光体」はLED、「対象物」はLEDを取り囲む筺体やリフレクタ、「目標位置」は路面や歩行者などになります。
当然、数本や数十本の光線追跡では、結果精度は上がらないため、通常は1つの対象物につき数百万〜数千万本の光線を、発光体から追跡します。
しかし、これだけの本数になると、たとえデータが光線とはいえ、通常は多くの解析時間を費やします。発光する光線の位置や方向は乱数発生法が使用されており、さらに目標に到達するまでには、屈折、反射、散乱などの現象を考慮する必要があるためです。いかに効率よく少ない光線追跡で、精度のよい結果を得られるかが照明解析では重要と言えます。
前置きが長くなりましたが、最近はLEDを「発光体」として取り扱うシステムの照明解析について、非常に多くの問い合わせを頂いています。
このLEDの市場が伸張している理由としては、以下が挙げられます。
- 消費電力とCO2の排出が少なく、寿命も長いので環境に与える影響が少ない。
- 従来の光源と比較してスペースを取らず、パッケージの小型化ができる。
しかし、今まで使用していた「発光体」とは光学特性が異なるため、評価方法の確立が急務になってきているようです。
下記で、代表的な問合せ内容の例を紹介します。
電子機器の輝度解析
主に携帯電話のキーボタンや、車内のインパネ類の輝度解析をCAEで実施したいというお問合せです。通常、発光するボタンやメーター類の後ろには、任意形状のアクリルなどの透明な導光板(ライトガイド)が配置されています。そのライトガイドの先には、複数個のLEDがあり、その位置を変更することで、より少ない数のLEDで広い範囲を発光させる可能性を探り、コスト削減が行えます。
照明器具の配置設計
照明器具を蛍光灯からLEDに変更した場合、ものの見え方が異なったり、明るいところと暗いところの差が激しくなったりしており、事前の解析で予測をしたいというお問合せです。主にLEDの演色性や指向性が、蛍光灯と異なることから発生する現象です。
これも、あらかじめLEDの配光データを使ってシミュレーションすることで、問題を回避することができます。
電飾品の見え方
LEDを多数使用したパチンコ台や看板などが、実際にどのように見えるかシミュレーションしたいというお問合せです。周囲の明るさ、見ている位置、見る人の年齢や、LED自体の色特性など、多岐にわたる要因から、電飾品の見え方やデザイン性が変わってきます。最新のCAEソフトでは単なるCGレンダリングではなく、物理現象を考慮したリアルなレンダリング出力を行うことができます。
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