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進化し続ける! LEDヘッドランプの熱流体解析踊る解析最前線(12)(1/2 ページ)

自動車部品メーカーの市光工業のLEDヘッドランプの設計&解析事例を紹介する。今回は熱設計(熱流体解析)とCAEについて取り上げる。

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 日産自動車の電気自動車リーフには、LEDヘッドランプが標準搭載されている。同製品を開発、製造した企業が、自動車用ランプ、ミラーなどの開発を専門とする市光工業だ。前回はLEDヘッドランプの光学設計について紹介した。そして今回は同製品の熱設計について、LEDならではのポイントや、CAEの活用を踏まえながら紹介する。

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 自動車のヘッドランプの設計においては、放熱設計も重要だ。LEDは発生する光のほぼ100%が可視光で赤外線は放射されない。しかしヘッドランプほど大量の電流を流すLEDになると自身の発熱量が相当大きくなる。しかもLED素子は白熱灯などに比べると熱に弱い。輝度が落ちたり、寿命が短くなったり、最終的には点灯しなくなるといったこともあるため、熱対策が重要になる。

 今回はLEDのジャンクション温度上限が150℃以下に収まるように、ヒートシンクを含めたランプ全体を検討した。今回の設計においてはLEDランプという初めての取り組みだったにもかかわらず、ヒートシンクの試作は1回だけだったという。なお日本独自の傾向として、構成が複雑になる強制空冷を避けたい、つまり「ファンを使いたくない」という考えがあるということだ。今回のヒートシンクは放熱性を高めるため、黒アルマイト処理を施している。

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3次元的な形状をしたヒートシンク:解析がなければ、このような複雑な形にはできない

初のLEDランプの熱対策

 同製品の熱設計について、入社以来、一貫して熱設計に携わってきたコア・エンジニアリング部 シミュレーション課 シニアエキスパート(解析技術)上級技師で工学博士の菊池和重氏に話を聞かせていただいた。同社ではヒートシンクなど主な部品は「CATIA」で設計し、熱流体CAEは「NX Thermal/Flow」を使っているとのことだ。

 菊池氏がLEDの熱流体解析に取り組み始めたころは、未知のことがたくさんあったという。LEDに対する熱流体解析の手法を確立していくために、まず熱のみで流体を扱わない単純なモデルから始めた。板の上にLEDを乗せただけのモデルを作成、それを徐々に複雑化させていき、LEDの解析において重要なポイントを洗い出していった。こうした積み重ねの結果が、今回の試作回数の少なさにつながったといえるだろう。

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市光工業におけるLED熱流体解析の変遷:上段の左は菊池氏が同社で熱流体解析に取り組みだした約8年前(2003年頃)の状態。下に行くにつれて最近の状態となる。

6つのLED熱流体解析ポイント

 菊池氏が検討を重ねた結果、LEDの熱流体解析において重要なパラメータが6つ分かった。

 1つ目がLEDの構造だ。ヘッドランプ用LEDは数cm角、厚さ1cmと大型であるため、普通のサイズのLEDのように点熱源には置き換えられない。そのため発光部分、サブマウント、ヒートスプレッダーといったLEDの構造を把握することが必要だ。

 2つ目に必要なのが、LEDを構成する各材料の熱伝導率だ。

 そして3つ目が発熱量である。消費電力から発熱量を推定することになるが、LEDによって異なるため慎重に決めなければならないという。「この値がいいかげんだと、きちんとした検討ができません」(菊池氏)。

 続いて4つ目が接触熱抵抗だ。この値によって温度差が出るため、正確な入力に苦労するとのことだ。

 5つ目がグリスの熱抵抗。厚さなどを決めるが、実際にはみ出たりすると外観不良になるため、値の設定に注意が必要だ。

 そして最後の6つ目がヒートシンクの形状である。LEDはヒートシンクのサイズと比べれば点熱源と見なせるため、放射状に拡散するとして単純に計算できる。

 これらの検討の結果、熱流体解析では実用に問題ない許容範囲を「±2℃」としている。実際の熱伝導率などを測定した結果から導き出した値だという。

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