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日産リーフ搭載のLEDヘッドランプ光学設計踊る解析最前線(11)(1/2 ページ)

自動車部品メーカーの市光工業のLEDヘッドランプの設計&解析事例を紹介する。今回は光学設計とCAEについて取り上げる。

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 日産自動車の電気自動車リーフには、省電力対策の一環としてLEDヘッドランプが標準搭載されている。同製品を開発、製造した企業が、自動車用ランプ、ミラーなどの開発を専門に手掛ける市光工業だ。同社のLED特有の開発の進め方やCAE活用について、2回に分けて紹介する。今回はLEDヘッドランプの光学設計、次の第12回は熱設計(熱流体解析)についてとなる。

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市光工業によるLEDヘッドランプ

 リーフは日産自動車による量産型の電気自動車である。2010年12月に日本、欧州および北米で発売が開始された。2012年には世界的に展開される予定だ。その自動車に搭載されているのが、市光工業の設計・製造するLEDヘッドランプである。LEDは長寿命で応答性に優れ、高い視認性、省電力といった特徴から、電気自動車で採用が進みつつある。今回の製品ではヘッドランプのロービーム(片側のみ)につき白色LEDを2個使用し、消費電力を23Wに抑えている。これは一般的な自動車に搭載されている、発光原理が白熱電球と同じハロゲンランプの約4割、ハロゲンランプより高性能で蛍光灯と発光原理が同じHIDランプの約半分に当たる電力だ。米Philips Lumileds Lighting社製の自動車用高光束LEDを採用している。明るさは500lm以上、色温度は5500Kである。とくに白色の鮮やかさや、対象物のコントラストの高さがポイントだという。

 なお、このリフレクタは青く見えるデザインになっている。これはリフレクタ自身が青いわけではない。デザイナーの希望はリフレクタを青くすることだったものの、反射が減るため難しい。そこでコア・エンジニアリング部 シミュレーション課 主務の岩崎和則氏のアイデアで、下の青いパネルを映り込ませることで青く見えるよう工夫したという。

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青いパネルを映り込ませることで青く見えるデザインにしたリフレクタ

LEDへの取り組みは9年前から

 光学設計について話していただいた岩崎氏は、入社以来、一貫して光学設計に関わってきた。同氏がに入社したころ、既に本格的に3次元CADの教育が始まっており、当初から3次元をベースに設計してきたという。市光工業におけるLEDのヘッドランプへの取り組みは約9年前からスタートしており、ほぼずっとLEDの光学設計に関わってきたということだ。同社では光学のCADは社内開発で、CAEは市販および社内開発のものを使っているという。

 ヘッドランプの設計は、自動車メーカーからの依頼で始まり、光学設計、回路設計や熱設計などを経て試作品を作成、実験課で評価して量産という流れになる。全く一から作ることもあれば、既存のランプの設計をベースに設計することもある。転用タイプであれば開発に掛かる期間は1年半程度ということだ。

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市光工業の工学設計プロセス(同社資料より)

 まず自動車メーカーから、ヘッドランプのスペックおよび、デザインの要望が示される。

 スペックは配光性や光量、光の質などだ。デザインはデザイナーによるものが提示されるが、デザインとヘッドランプとして必要な構造との間でトレードオフを図らなければならない。デザイナーとの検討は自動車会社の設計者を通してやり取りすることになるため、時間のかかることの一つだという。実現可能かやり取りをして検討し、ランプの意匠を詰めていく。

 ランプの設計に当たって気を付けることは、まず自動車のランプとしての法規定を満たすこと。そして注文先の要求だ。光量や照度、何mまで光を届かせるなどといった、数値で規定できるものは検討しやすい。一方、官能的な条件、つまり人の感覚に依存するものは評価が難しいため苦労するという。「例えば、路面に映ったときに筋っぽい、むらっぽい、目障りな余計な光がどこかに出ているなど、『見て受ける感じ』は明確な基準が設けにくい項目です」(岩崎氏)。

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