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熱解析するなら「サーマルマネジャー」を育てなさいMONOistゼミ レポート(1/3 ページ)

本稿では、2013年9月11日、都内で開かれたMONOistゼミナールの内容をお伝えする。今回のテーマは、「熱解析入門」。“入門”ながら聞きごたえある講座となった。サーマルデザインラボの国峯尚樹氏、オリエンタルモーターの伊藤孝宏氏が講演した。

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 2013年9月11日、都内で「MONOistゼミナール CAEカレッジ〜電子機器設計に役立つ熱解析入門講座」が開催された。講演に登壇したのはサーマルデザインラボ 代表取締役 国峯尚樹氏、オリエンタルモーター 鶴岡カンパニー 主席研究員で工学博士の伊藤孝宏氏。アジェンダ最後のパネルディスカッションには、ソフトウェアクレイドル(以下、クレイドル) 技術部 技術二課の衛藤潤氏も登場した。

 国峯氏は電子機器の熱設計における現状を紹介するとともに、熱設計の流れや検討内容などについて具体的に分かりやすく説明した。また伊藤氏が日頃から手掛けるファンモーターを例に、比較的簡単に取り組める最適化の手法を紹介した。パネルディスカッションでは、登壇者らが、来場者からの熱設計や最適化の導入などに関する質問に答えた。

部品自体が放熱できなくなっている


最近の電子機器は放熱限界で勝負している

 まず国峯氏が示したのが、近年電子機器の容積に対して消費電力の比率が増大していることを示すグラフである。


サーマルデザインラボ 代表取締役 国峯尚樹氏

 電子機器の小型化・高密度化が進む中、熱問題に対して大きな影響を占めるのは、小型化する半導体素子だと国峯氏は言う。従来は素子自身の熱を空気への放熱によって逃がしていた。だが今は基板や配線に頼って熱を逃がすのが当たり前という状態になっている。

 「(周辺部品をうまく利用して熱を逃がさなければならないという事実を)基板設計者はあまり意識していないようだ」と国峯氏は心配する。また小型化に伴うリーク電流の増加による熱暴走や、電子機器による低温やけどなども、携帯型の機器が増えていく中、避けては通れない問題である。


低温やけどについて

“設計後の”熱対策から、“設計前の”熱設計へ!

 熱問題への取り組みは従来より行われてきた。まず簡単なケースだが、設計したモノを作った後で温度を計測し、その結果を基に熱対策部品の追加などを行う方法だ。その次の段階になるのが、シミュレーションによる熱解析である。ただ解析ツールによる検討は、「実験をコンピュータ上に置き換えた」だけであって、従来の熱対策と手順自体は変わらない。

 国峯氏が理想的な方法として示すのが、熱解析をさらに一歩進めた「熱設計」である。


熱設計と熱解析

 考え方としては、「図面を書く前に熱に関する設計を終わらせる」、つまり「熱対策が、あらかじめ設計図に盛り込まれている」ということである。従来は設計後に熱状態を検証して対策するのが通常だった。その場合、電子機器の機能を優先して設計することになった。国峯氏は「まず、この流れを変えなければいけない。機能設計と平行して熱設計も行うべきだ」と強調した。

 設計する前の熱の検討について提言する専門家として、企業内に「サーマルマネジャー」が必要だと国峯氏は言う。というのも、熱対策に関しては複数の担当者の共同作業になるからだ。まとめる役が必要であるとともに、責任の所在が曖昧にならないようにし、今後の対策につなげやすくする。

安易に熱に関する経験のない人が使うのは危険

 なお国峯氏は、熱設計に携わる人の条件として、熱問題にある程度以上習熟することが必要だと念を押した。つまり設計をする際には、どの部品や構造が熱問題への影響度合いが大きいか、あらかじめ予測できることが必須だというわけだ。シミュレーションソフトを使う動機として「『全く予測ができないからシミュレーションで見てみよう』という使い方はそもそもあり得ない」と国峯氏はくぎを刺した。

 熱がらみの現象への理解がなく、実験の経験がない人は、危険な箇所を見逃してモデルを簡略化してしまったりする。そうすると結果が出ても肝心なポイントが反映されていないため、解析する意味がなくなってしまう。

 実際、解析経験が1〜15年の15人に同じ基板実装部品の温度を予測してもらったところ、解析結果には実に30℃以上の差が出たという。


スキルの違いによる解析結果のバラつき

モデル化の違いと誤差要因

 「設計者に使いやすい」などのうたい文句が出ているが、ポイントを押さえずに使うと解析ツールを使いこなせず、真価が分からないまま終わってしまうこともあり得るというわけだ。

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