道路工事も自動運転の開発の一部、ドイツの産官プロジェクト:自動運転技術
ドイツでは、行政と自動車業界、IT業界が協力して自動運転開発プロジェクトを進めている。開発は車両の制御やセンサーにとどまらず、ガードレールや路面の標示、道路工事まで対象に産官連携で取り組む。
Audi(アウディ)は2016年10月18日(現地時間)、ドイツ国内で産官が連携して取り組む自動運転開発においてテスト中の新技術について発表した。アウトバーンで自動運転車が走行しやすくするためのインフラ対策や車車間/路車間通信の実証実験を進めている。2017年には自動運転車向けの舗装工事や道路へのセンサーの設置に着手する。
産官連携でインフラを作り直す
アウディは、ドイツ連邦交通デジタルインフラ省やバイエルン州、自動車業界、IT業界が共同で実施する「デジタル モーターウェイ テスト ベッド」という産官連携の自動運転開発プロジェクトに参加しており、道路の構造的な対策と通信技術の活用の2つに取り組んでいる。
道路の構造的な対策に関しては、インフラの信頼性を高めることで自動運転車の走行をサポートする考えだ。標識やガードレールに使われる部材の改良や設計見直しに取り組んでいる。
アウディのパートナー企業は、車両のミリ波レーダーが発した信号をより遠くから雨や雪の影響を受けずに効果的に反射させるため、ロードサイドポストの内部構造や素材を検討している。また、デジタル モーターウェイ テスト ベッドの参加企業では、正確に自車の位置を把握できるようにする車線マーカーや道路標識の研究も行われているという。
また、路面の標示の読み取り性能を高めた車載カメラも開発する。この車載カメラは、標示の読み取りに加えて、自車位置検出の精度向上にも活用する。
通信技術の活用では、速度制限や渋滞情報、車線制限といった情報をモバイル通信を利用して車両に直接配信するシステムを検討している。モバイル通信網がカバーしていない地域では、車車間通信を使用する。また、車車間通信は、凍結路面の警告や、短い車間距離での隊列走行にも利用する考えだ。国や地域によって交通情報の表示の仕方が異なるため、共通のインタフェースも開発した。
アウトバーンの一部区間ではセンチメートル単位の測量も行っている。橋や標識、路面標示の位置を正確に把握し、地図会社のHEREが作成しているHDライブマップに反映させる。
アウトバーンを降りた後の運転支援も検討
高速道路を出て市街地に入ると交通状況の複雑さが増すことを踏まえ、インゴルシュタットのアウトバーン出口の近くで、「ファーストマイル」と呼ばれる公道実験も行う。2017年から、アウディはインゴルシュタット市と共同で、舗装の変更や合流地点へのセンサーを設置を進める。
また、アウディはこうしたインフラの改良を前提とした自動運転車のテスト車両を開発し、2018年から公道実験を開始する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- クルマは5Gのキラーアプリになり得るのか
「モバイルの祭典」として知られる「Mobile World Congress(MWC)」。今回のMWC2016では次世代移動通信システムである「5G」がテーマになっていた。いまだバズワード的にしか語られていない5Gだが、そのキラーアプリケーションとして期待されているのが「クルマ」である。MWC2016でも、クルマと5Gを絡めた講演や展示が多数あった。 - ITSの意味は「高度道路交通システム」でなく「賢い道路づくり」であるべき
ITSジャパンが開催した「日本ITS推進フォーラム」の基調講演に、東京大学大学院 工学系研究科 教授 家田仁氏が登壇。高度な情報技術を使っただけの交通システムではなく“賢い道路づくり”を目指して転換していくよう呼びかけた。 - 日本で自動運転システムを実用化するために解決すべき5つの課題
自動運転システムの開発を目指す「SIP-adus」では、日本国内で自動運転車を実現する上で解決すべき5つの研究開発テーマを設けている。また、2020年に東京で、自動運転システムを利用した次世代公共交通の実現を目指すことも目標に掲げている。 - アウディもBMWもダイムラーも欲しがる高精度地図データの雄、HEREの現在地
HEREは、高精度な3次元地図データをはじめ、自動運転車を実用化する上で重要な技術を持つ企業だ。配車サービスのUberや、アウディ、BMW、ダイムラーの3社連合が買収に名乗りを上げるなど注目を集めているが、そのHEREの現在の事業展開はどのようなものなのか。同社のアジア太平洋地域担当本部長を務めるマンダリ・カレシー氏に話を聞いた。