NECのIoTプラットフォーム、本質的な価値は“スピードアップ”:製造ITニュース(2/2 ページ)
NECは、製造業をはじめさまざま業界向けに展開可能なIoT(Internet of Things、モノのインターネット)プラットフォーム「NEC the WISE IoT Platform」を発表した。現在、同社のIoT関連の売上高規模は600億円程度だが、同プラットフォームによって事業展開を強化し、2020年度には売上高3000億円を目指す。
IoTシステム構築する際の「デジタルビジネスの要諦」
NEC サービス事業開発本部長の戸田晴康氏は「NEC the WISE IoT Platformの本質的な価値は“スピードアップ”にある」と強調する。
同社は、数々のIoTプロジェクトの経験から、顧客がIoTシステム構築する際の「デジタルビジネスの要諦」を導き出した。「仮説立案」「仮説検証」「スモールスタート」「事業成長」「堅牢化」という5つのビジネスフェーズに分かれており、NEC the WISE IoT Platformは各フェーズの“スピードアップ”に役立つわけだ。
例えば「仮説検証」のプロセスでは、分析に用いるAIとしてNEC the WISEだけでなく、目的に応じて他社のAIも利用できるようにする。さまざまなセンサーやデバイスからデータを収集するIoTデータ収集基盤も、AIによって効率を高めることが可能だ。
「スモールスタート」で効果を発揮するのが、NEC the WISE IoT Platformの最大の特徴である、共通機能のビルディングブロックだ。「顧客のIoTシステム構築の狙いや有している資産はさまざまだ。これまでは、すり合わせによってIoTシステムを構築していたため時間がかかっていたが、ビルディングブロックを使えば開発期間を短縮できる」(戸田氏)という。
「事業成長」では、各種クラウドの活用や、ビルディングブロックによるポータビリティやスケーラビリティが役立つ。クラウドはNECのクラウドサービス「NEC Cloud Iaas」やオンプレミスだけでなく、Amazon Web ServiceやMicrosoftの「Azure」といった他社のクラウドとも連携させられる。スモールスタートしたIoTシステムを拡張した際に、リアルタイム性の向上やネットワーク負荷分散が必要になれば、クラウドに配置していたビルディングブロックをエッジデバイスに再配置するなどの対応を柔軟に行える。戸田氏は「例えば、NEC the WISEは、クラウドに配置していたAIエンジンを、システム拡張の際にエッジデバイスに再配置することができる。これは、AI技術群だからこそできることだ」と説明する。
この他にも、「事業成長」におけるIoTシステムの将来的な拡張性を確保するため、「マルチコネクティビティ」と「オープンソース採用」をうたっている。IoTでは、5Gをはじめさまざまな通信技術の進化が想定されるが、NEC the WISE IoT Platformではアダプターとなる抽象化レイヤーを挿入して、異なる通信方式やデータ方式の差分を吸収していく考えだ。各ビルディングブロックには数多くの事前検証済みオープンソースを採用している。
「堅牢化」については、クラウドやネットワークの階層のセキュリティだけでなく、携帯電話機の開発などで培ったノウハウを生かしてIoTデバイスに組み込まれるソフトウェアの品質保証やセキュリティ確保を実現していくという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- なぜNECは「製造業×IoT」に全力を振り切れたのか
IoTがもたらす革新は、製造業にどういう影響をもたらすのだろうか。ITベンダーでありながら製造業としての立場を持つNECはその強みを生かして早くから製造業のIoT活用を支援する「NEC Industrial IoT」を推進してきた。同活動を推進するNEC 執行役員 松下裕氏に話を聞いた。 - “日本版”製造業向けIoTの中核を目指すNEC、Industrial IoTを全面にアピール
NECは「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS2015)」(会期:2015年6月24〜26日)に出展し、2015年6月16日に発表した「NEC Industrial IoT」の一連のソリューションを提案した。 - NECがIoT関連技術の開発体制を強化、エッジコンピューティングに注力
NECは、IoTプラットフォーム製品事業の強化を進めるため、現在グループで約300人の開発要員を2016年度中に1000人に増強する方針を示した。エッジコンピューティング関連の技術開発を強化していく。 - 建設業向けIoTソリューション、NECが2016年度下期から投入
NECは、「第27回 設計・製造ソリューション展(DMS2016)」において、建設現場における作業員の見守りに用いる建設業向けIoTソリューションを参考展示した。2016年度下期から販売を始める計画。 - 脳を模倣したAIチップをNECと東大が実用化、総合的提携の一環で
NECと東京大学が基礎研究から人材育成、社会実装まで及ぶ総合的な産学連携に合意した。第1弾として脳の構造を模したAIである「ブレインモルフィックAI」の実用化と社会実装を進める。