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ジェイテクト香川工場が挑むIoT活用、生産効率はどこまで高められるのかスマートファクトリー(5/5 ページ)

自動車のトランスミッションやディファレンシャルギアなどに用いられる円すいころ軸受を生産しているジェイテクトの香川工場。スマート工場を実現するためのIoT活用として位置付ける「IoE(Internet of Everything)」をはじめ、同工場が取り組んでいる生産効率化に向けたさまざま取り組みを紹介しよう。

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IoE以外にもさまざまな取り組み

 ジェイテクトの香川工場では、IoE以外にもさまざまな技術革新や生産性向上に取り組んでいる。

 最も新しい第3工場は、屋上に設置した太陽光パネルによる発電、建屋内の高さを同じにすることによる容易な温度管理など環境に配慮している。この第3工場にも、内輪の研磨/組み立てラインが19あり、IoEとは別の視点で「生産ラインの無人化」に向けた取り組みが進められている。

第3工場にある内輪の研磨/組み立てラインでも「生産ラインの無人化」に向けた取り組みが進められている
第3工場にある内輪の研磨/組み立てラインでも「生産ラインの無人化」に向けた取り組みが進められている(クリックで拡大)

 内輪の研磨/組み立てに関わる作業者のうち、単純作業を担う作業者は、製造ラインへの部品投入(内輪、保持器、ころ)にタクトタイムの3割強の時間を使っていた。そこで、製造ラインへの部品投入をロボットで行うとともに、先述した頻停ゼロラインの成果によって得られた生産性向上と組み合わせて、単純作業を担う作業者の省人化を目指している。

部品投入に用いるのと同じタイプのロボット
部品投入に用いるのと同じタイプのロボット。ジェイテクトの自社開発で、ステアリング工場での運用実績がある(クリックで拡大)

 この取り組みは2017年1月から3つのラインで始め、2017年度中に19のライン全てに適用する計画である。

 第3工場では、ころ研磨のラインで、ホームポジション制導入による大部屋化にも取り組んでいる。大部屋化とは、設備や工程を近くに寄せることで、複数のラインを少人数で受け持てるようにすることである。ジェイテクトでは亀山工場(三重県亀山市)が先行して取り組んでおり、そのノウハウを香川工場に展開しているところだ。

 ホームポジション制の導入前、ころ研磨ラインの稼働率は目標の85%に対して76.5%にとどまっていた。非稼働時間の半分近くを占めていたのが治具交換作業であり、治具交換作業が長引く原因になっていたのが治具交換を行う作業者がアンドン作業も担当していたことだった。治具交換をしている間にアンドン対応が必要になると、治具交換を中断していたのだ。

 そこで、ラインに設置されていたアンドンの情報を1カ所=ホームポジションに統合。ホームポジションの作業者はアンドン対応に専念し、治具交換は他の作業員が行うこととした。これによって非稼働時間を削減でき、稼働率は78.9%になった。

ホームポジションでアンドン対応を行うためのモニタ各ラインに設置したアンドン ホームポジションでアンドン対応を行うためのモニタ(左)。各ラインに設置したアンドン(右)の情報が1箇所にまとめられている(クリックで拡大)

 ホームポジション制にも課題があるという。情報を統合したホームポジションのアンドンは固定されているため、担当作業員の歩行距離が長くなってしまうのだ。そこで今後は、ホームポジションのアンドンを、無線接続のタブレット端末に置き換えることを検討している。ただし、工場での生産に関わる重要情報を無線化するためにはセキュリティ面などで対策が必要になる。

取り組みは始まったばかり

 香川工場におけるIoEの取り組みは2016年度からなので、始まったばかりと言ってもいい。つながるソリューション。見える化ソリューションを実証試験ラインに実装してから、運用実績はまだ数カ月にすぎない。

 IoEの目的としては、つなげて見える化するだけでなく、収集した情報=ビッグデータを分析して、さらなる生産性向上を実現する必要がある。

 既にビッグデータ分析については「保全のIoE」「品質のIoE」として、研削盤とマシニングセンターを使った実証評価を行っている。TOYOPUC-Plusとつながる「TOYOPUC-AAA」という分析ユニットを使って、加工の不具合の1つである研削焼けの兆候を監視しようというものだ。

 これは設備単体での取り組みだが、今後はこういった分析手法を実証試験ラインにも拡大しなければならない。「サーバに蓄積した情報から品質の変化点を見られるようになる。香川工場で分析まで含めたIoEの技術を確立し、海外に展開できればうれしい」(ジェイテクト 香川工場 製造技術部 部長 山下喜啓氏)と、IoEに対する意気込みは強い。

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