ハードウェアスタートアップに必要なのは「リスク屋」!?:zenmono通信(6/6 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回はOmotenasy CEO 今村泰彦氏、同社CCO 西村拓紀氏が登場する。
これからは「リスク屋」が必要になる
enmono このヘッドフォンでクラウドファンディングを考えていらっしゃるとか。
今村 はい、クラウドファンディングもスタートします。
enmono 目標金額はどれくらいで?
今村 一応10万ドルスタートで。
enmono 10万ドルというと1千万円。
今村 1千万円いかなかったらメイクしないです。50万ドル(5〜6千万円)を目指してやっていこうと思います。これ量産するとなったらそんなんじゃ全然無理ですからね。ほんと数億円いるよ……。
enmono そうですねぇ。そのためにメーカーさんのパワーも必要なんですね。
今村 日本の大企業の方とも一緒に何かをやっていくというのが日本の未来につながると思います。エコシステム的に。日本の大企業に対して悪口ばっかり言っているようだけど、本当に優秀な方が多いですし、問題意識もある。ただし、3カ月の予算の壁があって、何回もある稟議を通らない、これだけなんですよね。アイデアはあるし、能力もある。プロジェクトも走ってるんだけど、モノが出ない。
今村 ここをブレイクスルーするためには、ある程度の証拠をこっち側でそろえてあげないといけない。その稟議を通すための材料をあげる。市場マーケティングみたいなことはいろいろできるわけで、そこも誰かがリスクを取ればいいという話なんです。必要なのは「リスク屋」です。
enmono 「リスク屋」!
今村 「リスク屋」。僕はもう今はこれ以上無理ですけど(笑)。
enmono 今村さんみたいな方ってどこにいるんですかね。
今村 いっぱいいますよ。アントレプレナーって言われる人たちをアーティスト的なカテゴリで見てるんですけど、そういうちょっとカッコいい人たちがいるじゃないですか。あの人たちは絶対「リスク屋」です。
enmono クリエイター。
今村 クリエイターです。「リスク屋」っていうのは要はリスクの計算ができない人たちですね。そういう人たちだけでもダメですけど。
enmono そういう人たちと大企業がコラボレートする。大企業の方もそれを求めているんでしょうね。今はまだ受け入れ体制ができていないだけで。
今村 さらに言ってしまうと、それに飲み込まれたら意味がないんですよ。要はその人たちを外に出してしまうくらいのパワーがいる。その人たちと組んで、お金やリソース・テクノロジーをうまく使いながらやって、その後は別に吸収されてもいいんですよ。
今村 重要なのは価値がこの瞬間に生まれていないということに対して「そのキャッシュを取った代わりに、この価値が生まれなかった」というバーター関係を理解できる人がちゃんとさじ加減をやっていかないと経営っていうのは成り立たないんだということです。
enmono そういう人たちが本当はどんどん出てくるべきなんでしょうけど。
今村 こういうことが失われてしまったのは経済界だけなんですよね。例えば音楽業界・エンターテインメント産業、これの中で重要なのは人の幸せに貢献しますとか、インスピレーションを与えるとか、幸福という定義を与えるとか、あと人生のストーリーを伝えるとかね。そういうことを担っていた産業なので、アーティストっていうのはそっち側に全生命を賭けてきた人種なんです。
今村 自分の身も削り、お金もバンバン――マイケル・ジャクソンなんかヤバイくらいお金使ってますからね。それで夢みたいなものを与え続ける、それによって人がつながる、人が世界観を持てる。それがなければやっぱり存在する意味がない。経済界もやっとクリエイティブなデザインとかアートとかを表現できるようになってきた感じがしますね。
日本の音楽シーンの未来
enmono これからはわれわれの時代だと。われわれっていうのは、心の部分を価値に変えていくというのが基本になっていくんじゃないかなと思うので、効率性よりも人の心の部分ですね。そこが大きなポイントになってくると思います。
enmono 最後の質問になるんですけど、日本の音楽シーンの未来について今村さんに伺えればと思います。
今村 「日本の」っていうのを外してもいいですか?
enmono はい。
今村 それで「世界の」って言おうとしたら、三木さんは「宇宙の」だろって言うと思うんですけど、そういうことだと思うんですよね。コミュニティーって「日本」っていう共同幻想もあるし、「世界」って言った時に「地球」みたいな共同幻想もあるけど、ホントはそんなに分かれてないんじゃないか。そういうユニティとか一体感とか、「これはこれでいいのだ」「全てはよし」だというのを実感できるのが、僕は音楽だと思っています。
今村 それは音楽がライブだとか、昔から人が集まって音楽をやると、振動がそろうんですよ。それは気持ちのいいことで。振動しているっていうのは重要なことで、そうすると共感みたいなものが生まれるんですね。シンクロみたいなものが生まれると人っていうのは不思議でヴィジョンが見えるんですよ。
enmono つながっていると?
今村 つながっていると感じられるんですよ。これは皆さん体感があると思うんですけど、科学的にも正しいことだというのが最近分かってきて、全ては振動であると。そういうことに貢献していければいいなと思いますし、逆に言うと音楽を1人で、自分の世界だけで聞いているような状況よりも一体感のある環境を共有していくみたいなところにつなげていきたいです。
enmono すごい壮大なコンセプトですね。音楽というものを単に音楽ではなくコミュニケーションのツールとして。
今村 そうですね。これはアウェイクニング・デバイスといって、今、旬な言葉で言うとフォースの覚醒――覚醒デバイスです。
enmono 貴重なお話をありがとうございます。西村さんもありがとうございます。
西村 ありがとうございます。
enmono これからの展開を楽しみにしたいと思います。
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