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素人ベンチャーが1年半で電気自動車を作るには?モノづくり×ベンチャー インタビュー(6)(1/2 ページ)

2014年に15年間勤めた経済産業省を退官した伊藤慎介氏。元トヨタ自動車のデザイナーとともにベンチャー企業「rimOnO(リモノ)」を立ち上げ、1年半で超小型モビリティーの試作車両の完成にこぎつけた。「ここまで来られたのは日本のモノづくりの裾野の広さのおかげ」(伊藤氏)と話す。

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 伊藤慎介氏は2014年に、それまで15年間勤めた経済産業省を退官し、特にクルマ好きというわけでもないのに超小型モビリティーのベンチャー企業「rimOnO(リモノ)」を立ち上げた。起業して1年半で試作車両の完成までこぎつけ、2016年5月には製品発表会を予定している。「日本は起業するには損の多い環境だ。生活が成り立たないと思える時期もあったし、頼みにしていた人に力を貸してもらえないこともあった。それでも自分のアイデアを実物に落とし込めたのは、日本のモノづくり基盤の裾野が広かったおかげ」と伊藤氏は話す。超小型モビリティの製品化に込める思いについて聞いた。

自転車のように身近で手軽な、かわいいクルマをつくりたい

リモノの伊藤慎介氏
リモノの伊藤慎介氏

 リモノが製作するのは1〜2人乗りの小さな電気自動車(EV)、いわゆる超小型EVだ。「自転車のようにシンプルでメンテナンスしやすく、雨の日は濡れずに移動できるような小さな乗り物を増やしたい。スピードは出なくていいし、運転免許なしでも運転できるのが理想だ」(伊藤氏)。そう考えるのは、自転車や自動車、原動機付き自転車(原付)など既存のモビリティでは移動に制約がある層をすくい上げるためだ。同氏は「移動の手段を増やさなければ今後、困る人が増える。既に困っている人もたくさんいる」と話す。

 「地方に行くと、小中学校の統廃合が進んで通学が困難な地域がある。毎日自転車で往復するのも大変なことだし、親御さんの送り迎えを考えると住む場所にも制約が出る。高齢者の移動手段も足りない。ある程度出歩きたいが、運転には不安がある年齢の人々が増えてくる。こうした人々はシニアカーには乗りたくないだろう。さらに、クルマに興味がない人も使いたいと思えるクルマがあっていいはずだ」(同氏)。

 クルマ好きではない伊藤氏がクルマづくりを決意したきっかけの1つは、トヨタ自動車が運営するショールーム、メガウェブにある子ども向けの運転体験車両「カマッテ」だ。

 伊藤氏は経済産業省時代に、トヨタ自動車出身で、のちにリモノの取締役でデザイン責任者となってもらう根津孝太氏と知り合った。この根津氏に連れられて、カマッテに乗った。

メガウェブにある子ども向けの運転体験車両「カマッテ」
メガウェブにある子ども向けの運転体験車両「カマッテ」 (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 カマッテは乗車定員3人だが、大人が乗り込むとかなり狭い。だがその狭さに魅力を感じたという。「クルマの楽しさの1つは、狭い空間と広い視野のギャップにあるのではないかとその時に思った。狭いから外に関心が向き、移動する楽しさにつながる。クルマの楽しさを感じた経験があれば、クルマ離れも食い止められる。快適な居住空間のクルマを否定するわけではない。クルマ好きではないが、この狭くて小さくてかわいいクルマなら良いと思えた」(同氏)。

 伊藤氏は経済産業省の自動車課で電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及を後押しする国家プロジェクト「EV・pHVタウン構想」の立ち上げに携わった。構想には“バッテリーが高価で電気自動車が売れないなら、デザインやブランディングで売れるようにすべき”との提言も盛り込んだ。それを、一から自分の手でやろうとしている。

 カマッテから気付きを得た頃は、政府が超小型モビリティの利活用を推進する制度が動き出したタイミングだった。伊藤氏は挑戦する価値がありそうだと考え始めた。根津氏に相談すると「やるなら副業や兼業は無理だ」との意見で、退官して起業することを決めた。定期的な人事異動があり、最後まで国家プロジェクトに携われない役所勤めのもどかしさも退官の決め手となった。

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