位置公差、輪郭度、振れ公差の測定はどうやるのか:寸法を実感する! 測定講座(6)(2/2 ページ)
今回は複合位置度公差について解説した後、位置公差、輪郭度、振れ公差の測定方法について説明する。
輪郭度の測定
位置度とともに近年の主役となっている輪郭度ですが、これも簡易的な測定は、図4のようなテンプレートが基本で、事実この方法は職人が手作業で物を仕上げる際にいろいろな業界で使われていると思います。
要は、少しずつ削ったり曲げたりしながらテンプレートと照合し、理想の形状に近づけていくのです。
輪郭度も、理想的には演算装置付の測定機で測定するのが理想で、接触式、非接触式と多くの測定機が用いられます。近年は3Dデジタイザといわれる非接触式の測定機で、形状全体を点群データで計測し、CADデータとのマッチングを行うものがあります。これらの測定機の進化とともに輪郭度の適用はますます増えてくると予想されます。
図5は接触式の3次元測定機による輪郭度の測定、図6は非接触測定機による点群データから、CADマッチングをした例を示します。
図5について補足:3次元測定機での測定方法
データム平面Aにプローブを数カ所当てて直交座標のXY平面を設定する。
ZX、YZ平面のデータムは2つ穴によるグループとなっているため、2つ穴の座標を入力してから2つの穴にプローブを当てる。これによって、XYZの直交座標系が構築できる。
次に3つのR8で構成された形状をポイントまたはスキャニング測定し、この測定データと理論的に正確な形状データ(設計データ)との解析を行い、輪郭度を出力する。
3次元点群データをCADデータと照合して、カラーマップにて偏差を表示できます。断面データも表示可能です。
振れ公差の測定方法
さて、幾何公差の測定の最後は振れ測定です。振れは、基本となる回転軸を定めて、円周方向または軸方向の振れを測定するものなので、回転させながら測定します。従って、軸を受けるものと振れを測定するものが必要です。図7のような測定方法となります。
最近は、ここでも非接触測定技術の進化により、ダイヤルゲージでなく、レーザーセンサーなどの方法も使われ、より精度向上、さらには連続データ記録などが可能となり、運転中の連続測定記録なども可能です。
以上、ここまで幾何公差と測定技術の紹介を行ってきました。次回からは、いよいよ、私が実際に各種測定機を用いて測定を行います。皆さまも同時に測定を体験していただければ幸いです。
木下悟志(きのした・さとし)
プラーナー 研修推進室 室長 シニアコンサルタント。セイコーエプソンにて34年間勤務。プラスチック応用の開発経験が長く、非球面レンズや超小型ギヤードモーターの開発から量産、マーケッティングまで経験した。また基幹商品であるウオッチ、インクジェットプリンタ、プロジェクターの要素開発にも長く関わった。近年は研究開発部門のマネジメントにおいて開発の意思決定や外部との共同研究・共同開発の方向付けをした。材料開発、機構設計、プロセス開発、計測技術開発と幅広い知見を持つ。2015年より、設計者の能力開発を支援するプラーナーのシニアコンサルタントとして、幾何公差と計測技術を融合したセミナーを創出し、担当している。大手企業をメインに多数の企業で連日セミナーを担当し、実践コンサルも行っている。
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