町工場は暗い汚い? 金属って美しい! 金型工場発のメタルアートのミュージアムを作ろう:zenmono通信(7/7 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回はフジタ 代表取締役 梶川貴子氏が、金型工場発の新ビジネスのアイデアや取り組みについて話す。
日本の製造業の未来
enmono 最後に皆さんにお伺いしている質問があります。梶川さんが考える日本の金型の未来、日本のモノづくりの未来、町工場の未来でもいいです。そういったことに思いがあればお聞かせください。
梶川 未来に関しては今ウチの会社のWebページにも載せてあるんですけど、製造業では「多能工」っていう言葉があるんですけど、その「能」をもじって「脳みその脳」に変えてあるんですよ。なんでその「脳」に変えたかといったら、結局能力だけじゃなくて考えましょうという。
梶川 発想もその1つだし、同じ事を同じようにやるんだったらロボットの方が絶対速くて正確で大量生産もできるので、ロボットにできないことをやりましょうっていうのをコンセプトにWebページも作っています。なので、製造業に関わる方たちはロボットとかコンピュータができないような手仕事だったり匂いだったり音だったり、そういった人間しかできないような環境で仕事を進めていっていただきたいなと。
enmono 人間の本来持っているいろいろな感覚を研ぎ澄まして、そこから機械ができないようなものを生みだすと。それはアートにもかかってきているんでしょうか?
梶川 アートはやっぱり創造なので、共通するところはあると思います。
enmono そうですね、このアルミ欄間はまさにアートですからね。
enmono そういう場があって、作品が集まって、人も集まって。
梶川 ということです。
enmono うまくまとまりましたね。
梶川 我ながら。
一同 (笑)。
enmono 「型にはまらない金型」「町工場の逆襲」とかいろいろなキャッチフレーズが面白いですね。
梶川 知らない人が聞いたら「大丈夫なの? その会社」って。私も最初「題名は崖っぷち町工場の逆襲です」って言われた時、「これってウチのイメージいいのか悪いのかよく分からないなぁって一瞬ドキッとしたんですけど、よくよく考えてみたら崖っぷちっていうのは、売上が下がったからとか、そういう崖っぷちじゃなくて、先ほどから言っている人間の考えがフリーズしちゃうのが私は一番崖っぷちだと思うんですよ。
enmono そうですね。
梶川 例えば昔はもっと売上がよかったのに、今ほど幸福感ってなかったんですよ。
enmono 今の方が幸福感が高い?
梶川 今の方が、なかったものができたり、売上は今度の話で。
enmono 未来につながる――。
梶川 そうそうそう。これから「じゃあ、どうしていこうか」っていう先の話ができるんですけど、バブルの頃はやれ「納期がどうだ」「単価がどうだ」と言われることしかなかったので、どちらかというと今の方がのびのびと……
enmono 未来に対して希望が出てきたんですね。
梶川 私だけかもしれない(笑)。
enmono いや、社長が変わることが重要です。社長の意識が変わると社員も変わってきますから。
梶川 それこそ「型にはまらない金型」で、「はまらないぞ」という意識でまず一歩進めたかなと。
enmono 最近、慶応大学の前野先生という方と一緒に、モノづくりをすると幸福度があがるんじゃないかというテーマで共同研究をしているんですけど、まさにその1つの事例だと思います。
enmono はい、ということでお話はいろいろ尽きないんですけども、お時間となりました。本日はありがとうございました。
梶川 ありがとうございました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「システムズエンジニアリング」の正しい理解がISO26262対応に役立つ
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科 准教授の白坂成功氏は、宇宙機「こうのとり」のシステム設計に携わる中で学んだ「システムズエンジニアリング」を広めるべく大学で教べんをとっている。白坂氏に、宇宙機の安全設計や、ISO 26262などの機能安全規格のベースになっているシステムズエンジニアリングについて聞いた。 - きっかけは居候の若者!? ――町工場発のモノづくり拠点「Garage Sumida」の誕生前夜
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、潜水艦や電気自動車の開発、モノづくり拠点の運営など、ワクワクする新しい取り組みに積極的に取り組む町工場・浜野製作所の浜野慶一氏に話をお伺いした。 - 私たちに必要なオープンイノベーションとは? 国内外の有識者が議論
2016年3月5日、慶應義塾大 三田キャンパスで「第2回 ファブ地球社会/創造的生活者シンポジウム」が開催される。同シンポジウムでは人間の感性に関する新たな知見、デジタルものづくりの未来形、新たなコミュニティーから生まれる共創価値に関するさまざまな情報が発信される予定だという。 - 100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」で何を作る?
慶應義塾大学 環境情報学部および総合政策学部の1〜2年生を対象に、レーザーカッターで加工されたMDF(繊維板)、電子部品などで構成される100ドル3D工作機械「OCPC Delta Kit」を用いた授業が行われた。仕掛け人は、同学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏だ。記事後半では、未来の図書館や博物館に設置されるかもしれない3Dプリンタを紹介する。