トヨタは円高で減収減益も「将来への種まきはブレずにやっていく」:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
トヨタ自動車の2016年度第1四半期決算では、連結販売台数が前年同期比2.8%増の217万2000台と好調だったものの、急激に進んだ円高など為替変動の影響により、売上高が同5.7%減の6兆5891億円、営業利益が同15%減の6422億円に落ち込んだ。
英国のEU離脱決定による円高で緊急収益改善の取り組みを開始
現在も続いている円高に対応するため、前提となる為替レートを変更するとともに、業績予想も下方修正した。2016年度通期の連結業績予想は、売上高が26兆円、営業利益が1兆6000億円。税金等調整前当期純利益が1兆7800億円、当期純利益が1兆4500億円となった。期初予想に対して、売上高で5000億円、営業利益で1000億円の減少となる。
為替レートは、第1四半期の1ドル108円から、第2四半期以降は1ドル100円に変更。通期では1ドル102円となる。ユーロも1ユーロ120円から113円としている。
営業利益が1000億円減少するものの、この数字は為替などによる2150億円のマイナス影響を、原価改善と営業面の努力、諸経費の減少などによる1150億円のプラスで押しとどめた結果だ。大竹氏は「英国のEU離脱が決まった時に円高が進行したが、その時点から緊急収益改善の取り組みを始めており、その結果がプラス1150億円という数字になっている。2016年4月から導入したカンパニー制の効果も出ている」と説明する。
連結販売台数の見通しは総計890万台で変更はない。ただし、中近東での減少が顕著なその他市場を12万台減の136万台にする一方で、日本市場は据え置きの224万台、北米市場は3万台増の288万台、欧州市場は3万台増の95万台、アジア市場は6万台増の147万台として構成を変更した。北米市場は第1四半期に微減となったが、「2016年7月に北米市場におけるトラック、SUVの構成比が61%まで高まった。このトレンドに対応してトラック、SUVの供給を増やすので、販売台数は伸ばせるだろう」(大竹氏)という。また、熊本地震をはじめさまざまな生産のサプライチェーンに大きな影響が出ている日本市場については、「生産で8万台、販売で6万台、収益に換算して700億円程度の影響が出ている。現在は挽回生産に取り組んでおり、2016年内には完了できるだろう」(同氏)としている。
また、トヨタ自動車としては、2016年の世界全体の自動車市場は2015年とほぼ同程度を維持し、2017年以降は年率で数%ずつ伸びて行くという見通しも示した。
なお、今回の業績予想変更に合わせて、研究開発費が100億円減の1兆700億円、設備投資が同100億円減の1兆3400億円となった。大竹氏は「社長の豊田(章男氏)が言った『3つの意志』に変わりはない。自動運転などの将来に向けた種まきを、ブレずにしっかりやっていく」と述べている。
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