“町の工務店”成長の秘訣は新卒採用の継続にあり:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(8)(5/5 ページ)
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は、高度成長期に創業した典型的な“町の工務店”を継いだ2代目社長の奮闘を紹介する。売り上げアップの秘訣は、新卒社員採用の継続にあった。
さまざまなチャレンジの積み重ねで売り上げが大きく伸びる
翌年に新入社員が入ってくると、2年目の彼は先輩としての自覚でグっと成長した。以来、吉武工務店では毎年新卒を採用している。熱心に学ぶ若手社員に、棟梁も楽しそうに仕事を教える。
「クリエイティブワークスペースは、ジャンプ台だった」と吉田社長はいう。ジャンプ台を作れば、そのまま飛躍できると期待していたが、そうはならなかった。モデルルームを完成したあとのコツコツとした努力が、何年もかかってようやく自社の強みとして周囲に認知された。
今では、初めて会う方にも「東大阪の吉武工務店? 聞いたことがあります」と言われることがある。かつて、自分で作ったチラシをポスティングしても仕事が取れなかったことがウソのような気もしてくるそうだ。
さまざまなチャレンジが積み重なって、吉武工務店の売り上げは大きく伸びた。「今の収益は、過去最高」と丈彦氏はいう。
先日も製造業の食堂をカフェにリニューアルした。それまでその会社では、工場弁当といわれる昼食を工場の片隅で食べていた。
建物の外装は昔ながらの倉庫風だが、扉を開けると、目の前には天然木材を内装に使ったカフェが広がる。キッチンもしつらえてあり、将来的にはキッチンで昼食を作れるようにとなっている。
吉武工務店は、2016年4月、初めて女子の新卒社員を採用した。これを機会に女性の視点で、商品の魅力を伝えていきたいと考えている。
その新卒社員である藤本さんが、「友達にクリエイティブワークスペースの写真を見せると、“ここで働いているの? いいなぁ!”と言われます」と筆者に言ったとき、吉田社長は顔中クシャクシャにして笑った。
筆者プロフィール
松永 弥生(まつなが やよい) ライター/電子書籍出版コンサルタント
雑誌の編集、印刷会社でDTP、プログラマーなどの職を経て、ライターに転身。三月兎のペンネームで、関西を中心にロボット関係の記事を執筆してきた。2013年より電子書籍出版に携わり、文章講座 を開催するなど活躍の場を広げている。運営サイト:マイメディア
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