アマゾンと電化製品の連携にみる、IoT時代のサービスの在り方:IoTと製造業の深イイ関係(1)(4/4 ページ)
脚光を浴びるIoT(モノのインターネット)だが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第1回は、Eコマースの雄であるAmazon(アマゾン)の取り組みを見て行こう。
「Amazon DRS」や「Amazon Echo」を提供する真の狙い
アマゾンがAmazon DRSを提供する最も大きな理由は、もちろん、主力事業であるECの促進である。アマゾンはこれまでも、いかに簡単に購買につなげられるかについて尽力してきている。その中でAmazon DRSは、ユーザーが意識しなくても消耗品購入が可能な仕組みを提供する。しかしこのサービスは単なる消耗品販売を超えた、さらなる可能性を秘めている。
2014年12月にアマゾンは、「Local Services」という家電やPCといった電化製品の取り付けや修理を行うサービスを開始した。同サービスは約1年後の2015年11月に終了したが、実は同サービスの代替となる「Amazon Home Services」が2015年3月から始まっている。
Amazon Home Servicesは単なる電化製品の設置や修理にとどまらず、例えば家庭教師の派遣やクルマのバッテリー取り付けなどといった、いわゆるプロフェッショナルサービスの手配が可能となっている。
このことは何を意味するのだろうか。今後の可能性として、Amazon DRSとAmazon Home Servicesの提携により、電化製品に組み込んだセンサーが製品の消耗品だけでなく、部品劣化を含めた異常を感知し故障する前にその旨をユーザーに伝えて交換を促すことが可能となる。仮に交換を選択した場合、あるいは実際に故障が発生した場合も、同一アプリ上から修理/交換などの手配が可能となる。
今回はアマゾンの取り組みとしてご紹介したが、同様のサービスは自社展開でも協業/提携でも可能であろう。
こういった、ユーザーが気付く前に不足/不具合を察知し、対応策を施す機能というは、IoTの利点を最大限に活用し、実現されたサービスといえよう。オンライン注文を簡素にするところからスタートして、最終的には自社のプラットフォームでの単なる物品販売から飛び出してアフターケアという「サービス」を販売するに至ったアマゾンの今後の動向は、製造業に従事する読者のみならず、サービス業に従事する読者にも何かしらのヒントになるだろう。
筆者プロフィール
吉岡 佐和子(よしおか さわこ)
日本電信電話株式会社に入社。法人向け営業に携わった後、米国やイスラエルを中心とした海外の最先端技術/サービスをローカライズして日本で販売展開する業務に従事。2008年の洞爺湖サミットでは大使館担当として参加各国の通信環境構築に携わり、2009年より株式会社情報通信総合研究所に勤務。海外の最新サービスの動向を中心とした調査研究に携わる。海外企業へのヒアリング調査経験多数。
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