自動運転宅配サービス「ロボネコヤマト」はなぜ“実用実験”なのか:自動運転技術(3/3 ページ)
ディー・エヌ・エー(DeNA)とヤマト運輸は、自動運転技術を活用した次世代物流サービスの開発を目的とする実用実験プロジェクト「ロボネコヤマト」を発表した。2017年3月から1年間、政府が指定する国家戦略特区で実施する。
非対面での荷物の受け取りが可能に
ロボネコヤマトのコンセプトは「物流と最先端ITとの融合でもっと自由な生活スタイルを実現する」である。
ヤマト運輸執行役員の阿波誠一氏は「宅配のラストワンマイルの時間、場所、方法を自由自在にすれば、自由な生活スタイルにつなげられる。誰もが使いやすい物流プラットフォームによって、新しいビジネスモデルや物流コストの削減が期待できる。そして、自由な生活スタイルと新しいビジネスによって地域社会に貢献できると考えている。これら、生活スタイル、ビジネス、地域社会に変革を与えるのがロボネコヤマトだ」と説明する。
同社が自動運転によって実現できるラストワンマイルのオンデマンド化の可能性は5つある。ロボネコヤマトではこれらのうち「エニータイムデリバリー」をオンデマンド配送サービス、「ショッピングオンデマンド」を買物代行サービスとして実用実験を行う。
どこにいても自宅のように荷物を受け取れる「クラウド1マイル」、ヤマト運輸が岩手県や宮崎県で実証実験を進めている客荷混載を自動運転と組み合わせて広げる「ヒトモノコミューター」、地震などの災害時に必要になる物資をスムースに届ける「ライフサポート」は、2018年以降の検討課題になる。
DeNA 執行役員 オートモーティブ事業部長の中島宏氏は「現時点では、両社で協力してロボネコヤマトに取り組んで行くことを決めた段階。実用実験の詳細が決まれば順次発表していきたい。採用する自動運転技術についても、ロボットタクシーを共同開発しているZMPだけでなく、他の自動車メーカーなどにも声を掛けて行きたい」と話す。
なお、オンデマンド配送サービス、買物代行サービスとも、ロボネコヤマトの配送車後部のドアがスライドし、車両後部にあるロッカーの中からスマートフォンなどを使って荷物を取り出すイメージになっている。「この手法であれば、一部の顧客から要望の出ている非対面での荷物の受け取りが可能になる」(中島氏)という。
ただし、ロボネコヤマトを実施する地域はまだ決まってない。2017年3月の立ち上げではまず1つの地域が対象になる計画だが、都市部と地方で顧客のニーズは大幅に異なるため、各国家戦略特区における宅配サービスの実情を分析しながら、詳細を決めていくとしている。
関連記事
- 国家戦略特区で自動運転の実験、小泉進次郎氏「できるとこからガンガンやる」
ロボットタクシーの自動運転実験車を用いる「完全自動走行に向けた国家戦略特区プロジェクト」は、湘南エリアを皮切りに国内3カ所で2015年度内に実証実験を開始する。内閣府大臣政務官の小泉進次郎氏「できるとこからガンガンやっていく」と語っており、スピード感を重視したプロジェクトになっている。 - ロボットタクシー設立の理由は「自動運転のレベル4で先駆けたい」
ソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)と「ロボットタクシー株式会社」を設立するZMP。「人とくるまのテクノロジー展2015」のZMPブースで、同社社長の谷口恒氏に、ロボットタクシーに取り組む理由について聞いた。 - ヤマト運輸が新型配送車を4カ月で開発、「クール宅急便」改革を加速
ヤマト運輸は、保冷した状態で輸送を行う「クール宅急便」用の冷蔵/冷凍スペースを柔軟に変更できる新型配送車を開発した。クール宅急便改革を加速させるため、通常は1年かかる新型配送車の開発を4カ月で完了させたという。 - 物流の問題解決を自動搬送ロボットとビッグデータで、ベンチャーの挑戦
楽天物流の社長を務めた人物の立ち上げたベンチャーが、自動搬送ロボットとビッグデータで物流現場の問題解決に取り組む。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.