車載Linuxの開発が軌道に乗るもトヨタ自動車は「まだ満足してない」:Automotive Linux Summit 2016レポート(2/2 ページ)
Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」に関する開発者向けイベント「Automotive Linux Summit 2016」に登壇したトヨタ自動車の村田賢一氏は、「AGLの活動はうまくいっているが、これで満足していない」と語り、新たな活動についての提案を行った。
高級車と大衆車で分けてハードウェアアーキテクチャの策定へ
村田氏の先の言葉は、残りの20〜30%の開発に要する期間を圧縮するためのものだ。同氏は「まずは、AGL UCBから必要なもの不要なものを選別しなければならない。そして最終製品に合わせたコード修正や独自のHMI、ソフトウェアの開発も必要だ。特に、セキュリティについては、車両からクラウドまでエンドツーエンドでカバーしなければならないので、独自の仕様が求められる。AGL UCBを含めてソフトウェアを実装するティア1サプライヤにとっても、各製品のハードウェアに対応した変更が重要になる」と述べる。この解決策として提示したのが、AGL UCBベースの車載情報機器ソフトウェアを動作させるハードウェアのアーキテクチャに関するリファレンスの作成である。
現時点でAGL UCBは、動作を保証するSoC(System on Chip)の評価ボードの名前を公開している。バージョン2.0では、バージョン1.0でサポートしたルネサス エレクトロニクスとIntelに加えて、NXP Semiconductors、Texas Instruments、Qualcomm、「Raspberry Pi」が加わった。村田氏の言う、ハードウェアアーキテクチャのリファレンスは、センサーや周辺部品、インタフェースなど、SoCの評価ボードよりもさらに広い範囲で、AGL UCBに適したハードウェアのアーキテクチャを定義しようというものだ。
このハードウェアアーキテクチャのリファレンスについては、AGLに参画する自動車メーカー(2016年7月時点で、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、富士重工業、マツダ、三菱自動車、Jaguar Land Rover、Ford Motorの8社)によるハードウェアシステムEG(エキスパートグループ)で議論を進める。高級車とコストが厳しい大衆車向けの2種類に分けてアーキテクチャを定義し、2016年末までに発表する予定だ。その後、同EGへのティア1サプライヤや半導体メーカーなどの参加を募るとしている。
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