車載Linux開発に注力するトヨタ、課題解決に向け開発体制の一本化を提案:Automotive Linux Summit 2015リポート(1/2 ページ)
Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」に関する開発者向けイベント「Automotive Linux Summit 2015」に、トヨタ自動車の村田賢一氏が登壇。AGL、Tizen IVI、GENIVIという3つの組織に分散している開発体制の一本化に向けた提案を行った。
2015年6月1〜2日にかけて東京都内で開催されている、Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」に関する開発者向けイベント「Automotive Linux Summit 2015」(主催:The Linux Foundation)。
1日目の基調講演には、トヨタ自動車でBRコネクティッド戦略企画室長を務める村田賢一氏が登壇した。講演タイトルは「Unified automotive software code base for IVI and connected vehicle」で、今後の車載情報機器向けLinuxプラットフォーム開発の方向性について言及した。
2011年7月からLinux活動に参加
トヨタ自動車がLinuxの活動に参加するようになったのは、The Linux Foundationのゴールドメンバーとなった2011年7月のこと。同年11月に横浜市内で開催された第1回のAutomotive Linux Summitでは、村田氏が「トヨタ自動車が考える自動車の将来像を達成するために、これまでの自前主義から脱却し、Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアを積極的に活用していく」という内容の講演を行っている(関連記事:自前主義からオープンソース活用へ、トヨタが車載情報機器の開発方針を転換)。
その後トヨタ自動車は、2012年9月に結成されたAGLに参画し、車載情報機器向けLinuxプラットフォームの開発に注力してきた。現時点でAGLに参加している55社のうち、中軸を担うゴールドメンバーは6社。Intel、パナソニック、ルネサス エレクトロニクス、Symphony Teleca、Jaguar Land Rover、そしてトヨタ自動車である。
2013年5月開催の「Automotive Linux Summit Spring 2013」では、車載情報機器のユーザーインタフェース(UI)を管理するためのミドルウェア「UIマネージャー」や、UIマネージャーの動作を確認するのに用いるサンプルデモ「ホームスクリーン」などを披露している(関連記事:トヨタが「Tizen IVI」の開発に参加、車載情報機器のLinux採用に本腰)。
また、2013年からLinuxベースの車載情報機器の採用を始めており、2014年8月に発表した国内市場向けの新テレマティクスプラットフォーム「T-Connect」もLinuxベースになっている(関連記事:トヨタの新テレマティクス「T-Connect」はマイクロソフト+IBM+Linux?)。
村田氏は、「トヨタ自動車が、Linuxベースの車載情報機器の開発に注力してきた目的は大まかに分けて3つある。ソフトウェア開発コストの削減、市場投入スピードの向上、オープンイノベーションの促進だ。これまで約4年活動を続けてきたが、これら3つの目的を実際に達成できたかと聞かれると、その答えは『No』だ」と語る。
ソフトウェア開発コストの削減では、これまで参照プラットフォームとしてきたTizen IVIの開発が量産レベルに達していない。市場投入スピードの向上については、他分野で使われているコードのポーティングに依然として取り組みが必要な状態にある。そして、オープンイノベーションの促進については、Linuxベースの車載情報機器プラットフォームを開発する組織に断片化が存在し、エコシステムが大きく育っていないというのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.