GEはITベンダーを目指すのか、LIXILの「Predix」採用事例に見る地殻変動:製造業IoT
GEが2015年10月に発足した新組織「GEデジタル」。インダストリアルインターネットのクラウドプラットフォーム「Predix」を核に、ITベンダーと同様のソリューション提案を始めている。その狙いはどこにあるのか。
GEジャパンは2016年7月7日、東京都内で「GE Digital記者説明会」を開催した。GE Digital(GEデジタル)とは、GEの全社で横断的に点在していたデジタル関連機能を1つに集約した新組織だ。GEソフトウェアセンター、グローバルIT部門、各事業のソフトウェアチームと、2014年に買収したWurldtech(ワールドテック)のインダストリアル・セキュリティ部門が統合されている。
同説明会では、GEが推し進めるインダストリアルインターネットのクラウドプラットフォーム「Predix」や、現実の世界と全く同じ情報を仮想世界で再現しシミュレーションなどを行う「デジタルツイン」、電力や工場といったOT(Operation Technology)に基づくセキュリティなどの講演が行われた。
それらの中でも興味深かったのが、GEデジタルのシニア・ソフトウェアマネージャーを務めるデビッド・ビンガム氏の「GEのアウトカムベース発想とデザインシンキング」と題した講演だ。
ビンガム氏は講演の冒頭で、「GEの競合といえばこれまではシーメンスなど産業機器を手掛ける製造業だった。だがIoT(モノのインターネット)の時代になって、GEもデジタルに目を向けるようになった。このため、従来の競合に加えて、IT業界の企業も新たな競合になっている。IT業界も、IoTを契機に“産業”に目を向けている以上、これは当然のことだ」と語った。
このような事業環境下で、GEが提供する製品やサービスは急速に変化を遂げつつある。その典型例となるのが、ソフトバンクとの協業による、LIXILへのジョブスケジューリングソリューションの提供である。
このジョブスケジューリングソリューションは、LIXIL子会社のLIXILトータルサービスが戸建て住宅向けの浴室設置における施工員手配を効率化できるように開発したものだ。Predixのスケジューリング機能を核に「アウトカムベース発想」(ビンガム氏)によって、1カ月以内という短期間でのソリューション開発を実現したという。
しかし、施工員手配を効率化するジョブスケジューリングのソリューションは、一般的にはITベンダーがERPなどを用いて提供していることが多い。また、アウトカムベース発想と呼んではいるものの、その開発手法はIT業界で当たり前になりつつあるアジャイル開発そのものだ。
つまり、核になるプラットフォームにPredixを用いているものの、GEがソフトバンクとともにLIXILに提供したソリューションは、ITベンダーのやっていることと何ら変わりがない。
では、GEはITベンダーになろうとしているのだろうか。「LIXILへのソリューション提供の入口はジョブスケジューリングだったが、今後はこれを起点にIoTを活用したソリューション提供にも広がっていくだろう。そのときに、プラットフォームがPredixであることを大いに生かせる。製造業がIoTを活用するサービスを見据える中で、GEデジタルとしては多方面から提案できるようにしていきたい」(GEデジタル Predixセールスエンジニアの戸田圭輔氏)という。
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