HILSとセンサー:いまさら聞けないHILS入門(3)(4/4 ページ)
車載システムの開発に不可欠なものとなっているHILSについて解説する本連載。今回は、HILSの入出力インタフェースのポイントとなるセンサーの構造と機能について分析し、HILSの信号発生回路仕様について考えます。
スロットルポジションセンサー
スロットルポジションセンサーは、本システムでは、図1の可変抵抗を用いています。この他に非接触のホール素子を用いたものなどがあります。可変抵抗でスロットルポジションを検出する方法は、抵抗の両端に、センサー電源電圧を印加し、スロットルポジション(角度)と連動する摺動子で、抵抗の中間部分に接触することによりスロットルポジションに対応する電圧を出力します。電圧は、センサー電源電圧(5V)とGND(0V)の範囲で連続的に変化します。
これに代わるHILS信号発生回路は、センサーと同様の可変抵抗を使用する方法もありますが、抵抗変化をコンピュータで制御することは簡単ではないので、多くは図7の様にD-Aコンバータと呼ぶアナログ電圧発生回路を使用します。図7の回路では、これに加えてセンサーGNDをD-Aコンバータの基準GNDにすることにより、出力電圧の精度を向上し、センサー電源が出力されていることをD-Aコンバータの出力許可条件として、ECUのセンサー電源出力の状態も信号出力に織り込んでいます。
水温センサー
エンジンに使用される温度センサーの多くはサーミスタです。サーミスタとは、温度により抵抗値が変化する素子で、図8下側のグラフのように、低温で抵抗値大、高温で抵抗値小という特性を持ちます。エンジン水温の範囲は、常温からエンジン作動中の100℃程度の間になります。
サーミスタとECU内部の抵抗を組み合わせた測定回路を構成することによって、図8上側のグラフのような温度と電圧の関係を得ることができます。ECUはこれをA-Dコンバータで測定します。
HILS信号発生回路は図9に示すようにD-Aコンバータを使用して、水温に相当する電圧を出力します。ECU回路の入力は、抵抗を介してセンサー電源の5Vが接続されているので、この電流の影響を受けてD-Aコンバータ出力電圧が変化しないように配慮する必要があります。
次回は、アクチュエータの構造と機能について分析し、HILSの疑似負荷回路と計測回路を考えたいと思います。
筆者プロフィール
高尾 英次郎(たかお えいじろう) 「HILSとTestの案内人」
1950年生まれ。岐阜大学機械工学科卒業。三菱重工で大型船のエンジン・推進装置などの修繕業務を担当の後、三菱自動車(現三菱ふそうトラック・バス)に転籍。エンジンの燃費向上・排出ガス低減研究、車両の燃費向上研究を10年余および電子実験、電子設計などを20年余担当。ITKエンジニアリングジャパンを経て、現在はHILSとHILS Testにフォーカスしたコンサルティングを行っている。
HILSとの関わりは、バス用の機械式自動トランスミッション開発中に、ECUのソフト検証用として1990年にMS-DOS PCを使ってHILSをゼロから自主開発して以来のもの。
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