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HILSとは何かいまさら聞けないHILS入門(1)(1/4 ページ)

最新の高級自動車は200個ものコンピュータを搭載しているといわれる。ECU(電子制御ユニット)と呼ばれるこのコンピュータが、正しく動作するかどうかを試験するテスト装置として注目を集めているのがHILSだ。本連載では、HILSの導入や、HILSを使ってECUのテストを行うための基本的な知識の提供を目指す。連載第1回は「HILSとは何か」だ。

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 今日「自動車は、コンピュータで動いている」といわれています。エンジンやトランスミッションから、ミラーのリモコンに至るまで、自動車の自動的に動く装置は、ほとんど全てECU(Electronics Control Unit:電子制御ユニット)と呼ばれるコンピュータを備えており、その数は一般的な自動車で約50個、高級車では200個ほどもあるといわれています。これに関連して“HILS”という言葉がかなり知られるようになってきました。自動車に興味をお持ちの読者ならこの言葉を聞いたことがあると思います。

 さてHILSとは何でしょう。HILSは、Hardware In the Loop SimulatorあるいはHardware In the Loop Systemの略で、ECUのテスト装置のことです。日本ではHILSという呼称が多用されていますが、欧米ではHIL(Hardware In the Loop)が一般的です。本連載ではHILSと呼ぶことにします。ここでいうHardware(ハードウェア)とは、ECUを示します。HILSは、ECUの制御対象となる機械装置をコンピュータの中のバーチャルな世界に作り上げて、実物のECUと連動して作動する環境としてECUをテストする装置といえます。

 本連載では、これまでHILSのことをほとんど知らなかった方が、HILSの導入や、HILSを使ってECUのテストを行うために基本的な知識を提供することを目指します。最初の一歩から具体的に解説したいと思います。

→連載「いまさら聞けないHILS入門」バックナンバー

HILSって、どんなもの?

 どうすればECUの制御対象となる機械装置を、コンピュータの中のバーチャルな世界に作ることができるのでしょうか。

 ECUは、センサーなどによって制御対象の状態を入力し、制御ロジックに基づいて出力値を計算して制御対象に出力する、という制御プログラムをサイクルタイム(例えば2ミリ秒)ごとに実行するコンピュータ装置です。ECUと制御対象とのやりとりを「制御ループ」と呼びます。実システムと同じような制御ループをコンピュータで作ることができればHILSを実現できます(図1)。

図1
図1 HILSの基本コンセプト(クリックで拡大)

 HILSは、ECUと連携して作動する必要があります。制御対象である実世界の電気/機械装置の代わりとなるバーチャルな制御対象の動作状態をシミュレーションと呼ぶプログラムを使って計算します。これを「プラントモデル」と呼びます。コンピュータ上のプラントモデルは、インタフェース回路と呼ぶ電子回路を介してECUの入出力回路と接続して制御ループを構成します。

 ここで、プラントモデルの計算時間が、実時間(実世界で過ぎる時間)と同じになるように、コンピュータをリアルタイムに作動させることができれば、ECUを実世界の制御ループと同じ様に作動させることが出来ます。

 この手法を「リアルタイムシミュレーション」と呼びます。HILSの根幹となる技術です。図2に示すように、ECUの出力値に応じて、実世界の制御対象の状態が点線のように変化するものとします。HILSは、時刻0ミリ秒に、ECUからの制御出力をインタフェース回路経由で入力すると、プラントモデルでtミリ秒後の制御対象の状態を計算します。計算にかかる時間をtミリ秒よりも短くすることにより、実時間のtミリ秒後に次の制御対象の状態をコンピュータから出力することができます。

図2
図2 リアルタイムシミュレーション(クリックで拡大)

 これに対して、ECUがTミリ秒のサイクルタイムで作動しているとすれば、その間にHILSはT/t回プラントモデルの信号値を更新しますので、ECUは直近に更新された信号値を入力することになります。このような方法により、HILSとECUは、それぞれのサイクルタイムで[入力/計算/出力]のサイクルを繰返すことでHILSによる制御ループが成り立ちます。

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