工場を止めないネットワークの基本機能と、ハブとスイッチの違い:工場用イーサネット入門(4)(3/4 ページ)
インダストリー4.0や工場向けIoTなどに注目が集まっていますが、そもそも工場内のネットワーク環境は、どのように構築すべきなのでしょうか。本連載では、産業用イーサネットの導入に当たり、その基礎から設備設計の留意点などを含めて解説していきます。第4回では、工場用イーサネットでも使うハブとスイッチの違いに焦点を当てながら、「基本的なネットワークの機能」を解説します。
第3層「ネットワーク層」
データリンク層では1つのハブやスイッチにつながるエンドデバイス間の通信が可能になりましたが、第3層(Layer 3、略してL3)の「ネットワーク層」では、L3スイッチやルーターを経由して別のハブやスイッチとの通信が可能となります。データ列は「パケット」という単位で扱い、エンドデバイスには「IPアドレス」というデータリンク層とは異なるアドレスが使われます。
ネットワークの世界では、1つのハブやスイッチに物理的につながっているネットワークの範囲をLAN(ローカルエリアネットワーク)、その中でも論理的・仮想的にグループ化されたネットワークをVLAN(バーチャルローカルエリアネットワーク)といいます。ネットワーク層では、このLANやVLANを相互接続させる機能を持っています。
VLANとは
VLANはスイッチにつながるエンドデバイスをグループ化して、複数のLANを1つのスイッチで提供する技術です。物理的に同じスイッチにつながっていなくても同じVLANで接続されているエンドデバイスであれば通信できることから「仮想LAN」ともいわれます。
このとき、物理的に同じスイッチにつながったエンドデバイスであっても、別のVLANに属するエンドデバイスとは通信ができません。これはブロードキャストする範囲がLANまたはVLANごとに区切られるためです。
第1回でご紹介したCASE STUDY(1)は、動作検証で構築した小規模ネットワークでは問題がなかったが、ネットワークの規模を拡大したらネットワークが止まってしまったという事例でした。その原因の一つとして、ブロードキャスト範囲が広がったことで、ネットワーク内の通信量が増えてしまったことが考えられます。
この事例を回避する方法の一つとして、VLANを使ってネットワークの範囲を限定するといった方法が挙げられます。ブロードキャストが機能する範囲を絞り込めば、おのずとネットワーク内の通信量も少なくなるというわけです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.