3Dスキャニング上達のための5つの基礎知識:CAD読み物(3/3 ページ)
3Dスキャナの能力について期待しすぎている人が少なくないようです。日ごろ、たくさんのお客さんと接する大塚商会の3Dスキャナ担当がいろいろ教えてくれました。
4.3Dスキャナの装置以上に重要なのは操作する人のテクニックです
通常、1回のスキャンで完全に形状を読み取れません。そのため、複数回スキャンしたデータを重ね合わせて結合し最適化する必要がありますが、重ね合わせる際に「合成誤差」が生じてしまいます。精密なスキャニングのためには、スキャン回数を増やしてできるだけ多くのスキャンデータが必要になりますが、かえって合成誤差を大きくしてしまうことにつながってしまいます。
メーカーが公表する精度はワンショット(1回のスキャン)での精度です。例えば、カタログスペックに精度0.2mm(ミリメートル)とあっても、複数のショットを最終的に合成したときには、合成誤差が加わって精度が落ちてしまうことになります。
つまり、情報量と合成誤差はトレードオフの関係にあり、なるべく必要最低限のスキャニング回数で高い精度の形状を読み取ることが必要になります。そこには操作する人のスキャンテクニックが必要とされ、一朝一夕に身に付くものではありません。
合成誤差を小さくするには、物体形状に合わせた最適なスキャニング方法の確立とスキャナ制御ソフトウェア特性の理解など、運用ノウハウがとても重要となるのです。
5.スキャンだけで3DCADデータはできません
3Dスキャナでスキャニングするとそのまま3D CADデータになるとつい誤解しやすいのですが、スキャンデータは点群データのため、そのまま3DCADで直接編集はできません。そのため、点群(ポリゴン)データをCADデータへ変換する必要があります。
この段階では、ただ単にデータを変換するのではなく、スキャンできなかったデータ欠損箇所の補完、修正、ノイズ処理、表面スムース処理などの操作も行う必要があります。その処理に必要なソフトウェアとして「点群(ポリゴン)編集ソフト」と呼ばれる製品があります。
◎併せて読みたい「CAD」関連ホワイトペーパー:
» 主要7製品を完全網羅! 製品選定・比較に役立つ「商用3D CADカタログ 完全版」
» 【導入事例】食品加工機械メーカー不二精機による“3D CAD推進”
» 設計現場の56.5%が3D CADを活用、2次元からの「移行予定なし」も16.7%
» エクスペリエンス時代に向けて進化を続ける「CATIA」
» PTCが語る3D CADの歴史と「Creo」の注目機能
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「3Dスキャナ」の進化を支える4つのトレンド
ローランド ディー.ジー.主催のモノづくりセミナー「Experience Day3」(東京会場)に登壇したデータ・デザイン セールスユニット セールスG マネージャー 日尾紀暁氏の講演から、3Dスキャナの市場動向や最新トレンドなどを紹介する。 - お気軽だけど侮れぬ。3Dスキャナで遊んでみた
3次元スキャナでぱぱっとデータを取り込んで、即、3次元出力! ……とはいかず、実はデータ修正に手間が掛かっているわけです……。 - 「Kinect for Windows」を3Dスキャナとして活用する
モーションコントローラーデバイス「Kinect for Windows」で対象物を3Dスキャンして、3Dプリントするまでの手順を詳しく解説する連載。第1回は、全体像の把握を目的に、Kinect for Windowsを用いた3Dスキャンから、3Dデータの修正および3Dプリントまでの流れを紹介する。 - 「Kinect Fusion」による3Dスキャンを徹底解説
モーションコントローラーデバイス「Kinect for Windows」で対象物を3Dスキャンして、3Dプリントするまでの手順を詳しく解説する連載。第2回は、Kinect for Windowsを使った3Dスキャンの詳しい手順について紹介する。 - 「瞬撮」でフィギュア作ってみる? ――3Dスキャナでは考えられない早さの秘密
自分のフィギュアを作成できるサービス「瞬撮」。3Dスキャナを使って全身を3Dデータ化する一般的なサービスと何が違うのか? 筆者が身をもって体験してきた。立体になると見たくないものも客観的に見ることができる!?