車載パワーデバイスのシミュレーションエラーを20%から0.5%に低減:設計開発ツール
メンター・グラフィックス・ジャパンは、電気自動車やハイブリッド車に搭載するパワーデバイスの信頼性を評価する新製品「MicReD Power Tester(マイクレッドパワーテスター) 600A」を発表した。非破壊的な診断法によってパワーデバイスの熱特性や劣化を評価するとともに、1回のシステム試験で最大128個のIGBTについてパワーサイクル試験を実施できるようにした。
メンター・グラフィックス・ジャパンは2016年5月24日、電気自動車やハイブリッド車に搭載するパワーデバイスの信頼性を評価する新製品「MicReD Power Tester(マイクレッドパワーテスター) 600A」を発表した。同製品は非破壊的な診断法によってパワーデバイスの熱特性や劣化の進み具合を評価するとともに、8台の同製品を接続することで、1回のシステム試験で最大128個のIGBTのパワーサイクル試験を実施できるようにした。また、実測結果を熱流体解析(CFD)ツールに取り込むことで、パワーデバイスの動作時の状態に関するシミュレーションエラーを20%から0.5%まで低減する。IGBTの市場が車載用を中心に2020年まで拡大することに対応し、パワーデバイスの正確な寿命の検証に貢献していく。米国での販売価格は16万5000米ドル。
最大128個のIGBTを同時テスト
マイクレッドパワーテスター 600Aは、電流や電圧、ジャンクション温度の他、熱測定器「T3Ster(トリスター)」によって測定した、パッケージ構造の劣化を示す「構造関数」を試験中にリアルタイムで記録し、事後解析や破壊故障検査を不要にする。
車載用パワーデバイスの信頼性規格であるAEC-Q101の評価試験では、1テストロット当たり77部品と条件が定められている。マイクレッドパワーテスターの従来品は1台でIGBTを3個までしか同時測定できなかったが、新製品のマイクレッドパワーテスター 600Aは1台でIGBTを16個同時に測定できる。加えて8台接続できるので、最大128個のIGBTの同時テストに対応した。これにより、AEC-Q101の評価試験に利用できるようになった。
車載用パワーデバイスは、世界各国のテスト要件に基づいて、数万回に及ぶドライブサイクル試験を実施して実走行での寿命を検証することが課題となっている。IGBTはパワーサイクルと発熱によって劣化が進むためだ。IGBTの3次元シミュレーションモデルを作成して温度分布と時間を分析する一方で、実際の部品での試験も行い、IGBTの寿命を評価する必要がある。
マイクレッドパワーテスター 600Aは、パワーデバイスの冷却に関する熱流体解析の精度向上にも貢献するとしている。従来はシミュレーションエラーが20%と多く、精度に課題があったが、トリスターによって部材の特性を自動でキャリブレーションすることで、シミュレーションエラーを0.5%(最大値)まで削減する。
HVAC/エンジンやモーターの冷却/トランスアクスルの潤滑/パワーエレクトロニクスやバッテリーの冷却など電気自動車やハイブリッド車のシステム全体を評価するための1次元流体解析ソリューション「Flowmaster(フローマスター)」や、パワーデバイスの冷却機構の3次元流体解析ソリューション「FloTHERM(フローサーモ)」といった同社のソリューションと組み合わせることにより、車載用パワーデバイスに向けた包括的な熱エンジニアリングに対応する。
米国ではオーバーヒートなど熱信頼性のトラブルによって、電気自動車やハイブリッド車の大規模リコールが相次いでいる。2014年には、Ford Motorが7万4000台、Tesla Motorsは充電中にアダプターなどがオーバーヒートするとして2万9000台をリコールした。
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