体操競技の採点を3Dレーザーセンサーで
高度化する体操競技の採点を「人間の目視」から、3Dレーザーセンサーによる「機械の目」へ。富士通と日本体操協会が採点の高度化に取り組む。
体操競技の採点は長らく目視によって行われているが、技の高度化に伴って正確な判断が難しくなっている。その解決のために、競技者の体にマーカーを付けたモーションキャプチャー方式も検討されたが、装着者への負担もあることから実際の競技には利用されていない。
日本体操協会と富士通、富士通研究所は2016年5月17日、富士通研究所が開発した3Dレーザーセンサーならびに3Dデータ処理技術と、日本体操協会が持つ技の認識に関するノウハウを融合し、体操競技における採点支援技術の共同研究を行うことに合意したと発表した。採点者の負担軽減を始め、採点時間の短縮にも寄与することから競技者と観戦者にもメリットが生じると期待される。
非接触にて対象物を認識測定する3Dレーザーセンサーは遠距離の対象物を測定する際に解像度が低くなるという問題を有しているが、富士通研究所はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の制御技術を用いることで距離に応じて画角を自動調整し、対象が遠方であっても解像度を維持する技術を開発した。
加えて、得た3D情報に対して骨格形状を当てはめる新たな方式を、機械学習したモデルにて骨格を高速認識する従来技術と組み合わせることで、認識技術の高速化と高精度化も実現したとしている。
合意に基づき、富士通と富士通研究所は各種データの取得や要素技術の研究実証を、日本体操協会はデータ取得の協力や採点ノウハウの提供を行う予定。スポーツ庁長官 鈴木大地氏からは「日本が有する技術力の導入により、選手の演技や審判の質を向上させ、東京2020大会に向けて体操の競技力向上や魅力向上につなげていただきたい」とのコメントが寄せられている。
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