「不良発生率ほぼゼロ」を実現! 精密板金試作の相互的な意思疎通:ママさん設計者の「モノづくり放浪記」(2)(7/7 ページ)
ファブレスメーカーのママさん設計者が、機械系モノづくりの“生”現場を渡り歩き、ありとあらゆる加工の世界を分かりやすく解説していく連載。今回は精密板金試作の専業メーカーのトライアン相互を訪れた。
溶接機
ずっと奥に進んでいくと溶接室があります。ここには、2台のスポット溶接機、YAGレーザー溶接機、そしてTIG溶接機が一台ずつ備わっています。
見ての通り、これは溶接面です。
中にセンサーが内蔵されていて溶接の光を感知すると自動的にガラスが暗くなる自動遮光溶接面です。これは煩わしさがなく快適に溶接作業ができそうですね。
不良率ほぼゼロの秘訣とは?
トライアン相互の不良発生率はほぼゼロとのことです。その秘訣は……?
「どんなに手間がかかっても図面との照合、寸法チェックを怠りません。この段階で手を抜くと加工に入ってから不備が見つかり、図面どおりのモノが出来てこなくなります。そうすると材料は無駄になりますし、作業は振り出しに戻らざるを得ません。つまりトータルで見るとロスが出るので、寸法チェックは効率のよい製作に絶対欠かせません」。プログラム作成スタッフさんはそう語ります。
確かに「作業のはじめの一歩」であるプログラム作成に念を入れることで、誤った寸法での材料切断や誤った位置、誤った角度での折り曲げを未然に防ぐことは出来ます。でもそれだけではなく、こうして各工程を見学させていただくと、デリケートな精密板金製品に対して、加工、検査、梱包に至るまで社員全員が一貫して「ムダを作らず、合理的で丁寧な作業」を心掛けているのがよく分かります。かと言って、工場内に「不良撲滅!」とか「品質向上!」のスローガンが掲げられているわけでもないのです。どうやら日常の活発なコミュニケーションによって暗黙知が共有化されているのではないでしょうか。不思議に心地よく清潔な現場の空気から、そう感じます。
創業以来、プリンタやオーディオ機器のシャシーや半導体製造装置関連部品という比較的「うるさい部品」の製作に携わってきた中で、精密板金試作に対し、先々さらに厳しい精度を要求されることを見据えて、1993年には3次元測定機をいち早く導入しました。今も活躍するこの3次元測定機は、きっとここで精密板金業界をとりまく環境の変化を見届けてきたのでしょう。そして新設備がもたらす新たな展開にも期待しているのかもしれませんね。もちろん筆者も大いに期待しております!
Profile
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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