搬送ユニットに作業者が乗り込んで作業する、完成車組み立てラインを開発:工場ニュース
本田技研工業は、完成車組み立てラインに流動型のセル生産方式を組み込んだ「ARCライン」を開発した。車体1台と1台分の部品を積載したユニットに4人の作業者が乗り込み、車体と一緒に移動しながら作業をする。
本田技研工業は2016年4月21日、完成車組み立てのメインラインに流動型のセル生産方式を組み込んだ「ARC(アーク)ライン」を発表した。タイにある同社の四輪車生産販売現地法人ホンダオートモービルのプラチンブリ工場に導入された。
これまで四輪車の生産現場では、コンベア上を流動する車体に組み立て作業者が単一工程で部品を組み付けていく「ライン生産方式」が広く採用されてきた。ARCラインは、作業者が広い範囲の工程を受け持ち、複数の部品を組み付ける「セル生産方式」の生産ユニットをメインラインに組み込んだ組み立てラインだ。
1台の車体と1台分の部品を積載した搬送ユニット「ARCユニット」に4人の作業者が乗り込み、車体と一緒に移動しながら組み付け作業をする。これにより、従来の製造工程で発生していた「流れてくる車体の仕様に合わせて必要な部品を選び、歩きながら組み付ける」といった付帯動作を低減。生産効率が大幅に向上したという。
さらに、搬送コンベアの形状をループ状にすることで、組み付け開始時の部品箱投入と、完了時の空箱回収拠点を1つに集約。部品の搬入拠点数を最少化することで、工場内の部品運搬作業量が既存ラインと比べて約10%削減した。
ARCユニットは、ユニット単位で生産ラインへの追加ができるため、生産台数の変動や車種の追加に伴うレイアウト変更にも柔軟に対応できる。その他、設置スペースの制約を受けにくい構造になっているため、複数の工場で同じラインを導入することにより、投資コストも削減できる。
また、1人の作業者が広範囲な工程を担当することで、製造工程に関して、より幅広い知識と技能を習得できるようになる。将来的に、生産現場の意見を開発現場へフィードバックできるような「熟練作業者」を育成するといった効果も期待される。
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