日本キャタピラーが新ICT建機サービス「顧客や現場だけでなく機械の声も聞く」:製造業IoT
日本キャタピラーは、新たなICT建機サービスとなる「CAT CONNECT SOLUTIONS」を発表。これまで個別に提供していた機械管理、生産管理、施工管理、安全管理の4つのサービスを一体運用しながら、クラウドを介してさまざまなデータをリモートで一括管理できるようにした。
日本キャタピラーは2016年4月27日、東京都内で会見を開き、新たなICT建機サービスとなる「CAT CONNECT SOLUTIONS」を発表した。これまで個別に提供していた機械管理、生産管理、施工管理、安全管理という4つのサービスを一体運用しながら、Trimble(トリンブル)の「VISION LINK」でクラウドを介してさまざまなデータをリモートで一括管理できるようにした。
日本キャタピラーは、建設機械世界最大手Caterpillar(キャタピラー)製品の国内向け販売・サービスを手掛けている。日本キャタピラー会長兼CEOの矢口教氏は「現在、さまざまなモノから情報を得られるIoT(モノのインターネット)が話題になっているが、キャタピラーが建機からデータ収集を始めたのは15年も前のことになる。かつて鉄の塊と言われた建機は、今や情報で固められたICT建機になった」と語る。
実際に、世界全体で約300万台導入されているキャタピラー製品のうち、約40万台がデータ通信を行っている。導入率は約13%だ。一方、国内市場にある約14万台のキャタピラー製品については、20%強に当たる約3万台がICT建機として運用されているという。
IoT活用サービスの先行事例とされるICT建機だが、さらなる進化も求められている。国土交通省は2016年4月、建設現場の労働力不足などに対応すべく「i-Construction」の推進を決めた。i-Constructionでは、建設現場のさらなる生産性向上に加えて、安全性向上も目標になっている。
日本キャタピラーもi-Constructionに対応すべく、大手ゼネコンと連携する広域営業事業部の中に情報化施工推進グループを設置した。この情報化施工推進グループが中心になって提案活動を展開することになるのが、今回発表したCAT CONNECT SOLUTIONSである。
同社広域営業事業部長兼情報化施工推進グループマネージャーの本郷毅氏は「日本キャタピラーはこれまで『お客さまの声を聞く』『現場の声を聞く』ことを重視してきたが、これからはCAT CONNECT SOLUTIONSを通して『機械の声を聞く』ことにも注力していく」と強調する。
CAT CONNECT SOLUTIONSは、機械管理、生産管理、施工管理、安全管理という4つのサービスから構成される。機械管理では、車両の各種情報を無線通信で送信し遠隔地で車両管理を行えるようにする「PRODUCT LINK」を用いて、建機の稼働時間や位置、燃料消費、オイルの状態などの情報を総合的に分析し、故障の徴候などを把握できる。
生産管理は、PRODUCT LINKの情報から、各建設機械の稼働時間やサイクルタイム、運転走行路の最適化など生産性向上や生産コスト低減につながる分析を行う。
施工管理は、従来の情報化施工の分野となる。情報化施工を活用すれば、熟練オペレータの勘や経験に頼らずに、設計データに基づいた施工が可能になる。現場事務所や本社といった遠隔地からリアルタイムで施工管理することもできるようになる。また、国土交通省が推進するi-Constructionは3D対応の強化をうたっており、日本キャタピラーもCAT CONNECT SOLUTIONSの展開に合わせて3D対応を進めて行く考えだ。
安全管理は、i-Constructionが求める安全性向上につながるサービスだ。「シートベルト不着用の場合に警告を出したり、現場の管理者にその事実が伝わるようにしたりできる。建設機械の動きもリアルタイムで把握できるので、現場環境の安全性向上に役立つ」(本郷氏)という。
そしてこれらの情報は全て、VISION LINKによって見える化することができる。
日本キャタピラーは、CAT CONNECT SOLUTIONSの展開促進を情報化施工推進グループに一元化して、導入を加速させたい考え。当面は、営業スタッフへの教育/トレーニングや、各地域拠点で情報化施工を推進していた部署の情報を集約するなどしていく。また日本キャタピラーのCAT CONNECT SOLUTIONSのデータを、キャタピラーのグローバルの情報化施工サービスと合わせてビッグデータとして蓄積し、顧客サービスの向上に反映していくことも検討している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コマツが「世界初」のICTブルドーザーを発表、掘削から整地までを全自動化
コマツは、掘削から整地までのブレード作業を全自動化した「世界初」(同社)のICT(情報通信技術)ブルドーザー「D61EXi/PXi-23」を発表した。2013年6月に北米で発売した後、世界各国への導入を進める。 - 自動運転の波はトラクターにも、ヤンマーが2017年に量産へ
ヤンマーが公開した次世代トラクターのコンセプトモデル「YT01」は、自動で運転や作業を行える機能を搭載している。自動運転というと乗用車向けに開発されている技術というイメージがあるが、YT01のような農業機械以外にも、大型トラックや建設機械でも実用化が検討されているのだ。 - コマツがICTを活用する生産革新へ、“見える”の次は“つながる”
コマツはICT技術を活用した新たな生産革新を開始すると発表した。同社工場の稼働状況を見える化することで生産性を高める「モノづくりのつながる化」と、顧客に納入した建機類の稼働状況をリアルタイムでコマツの生産工場と共有する「市場情報の工場直結化」を進め、生産体制の強化を図る。