データムの測定はどうすればいいの?:寸法を実感する! 測定講座(3)(5/5 ページ)
幾何公差や寸法測定の課題に対する幾つかの取り組みを紹介していく本連載。第3回はいよいよデータムの測定について解説する。
3平面データム系の代表的な設定方法
続いて、基本的なデータム系として重要な3平面データム系の代表的な設定方法に関して説明いたします。以前にも説明しましたが、幾何公差の測定では立体的な公差域を確認するために3次元測定機を用いることが多いのですが、3次元測定機ではワークの設定の際にX,Y,Zの直交座標軸を設ける必要があります。その際には、3つのデータム平面が直交した3平面データム系の設定が有効です。
まずは、図9に示す代表的な外側3端面を利用する例です。まず最低3点で決まる第1次データム平面A(図中、赤で示す)、次にこれに直交する第2次データム平面B(図中、青で示す。直交性の規制は自動的に行われるので、最低2点の接触点があれば良い)、最後の第3次データム平面C(図中、緑で示す。直交性の規制は自動的に行われるので、必要な接触点は1点で良い)、の設定により3平面データム系が確定します。
次に、図10に示す、2つの位置決め穴を利用する例です。部品の位置決めをするのに2つの軸と、穴を用いる例は相当に多いと思います。まず、第1次データム平面A(図中、赤で示す)は先の例と同様です。第2次データム平面B(図中、青で示す)はφ13の一方の穴です。この平面は第1次データム平面Aに直交していて、位置は決まるのですが、回転方向の自由度が残ります。第3次データム平面C(図中、緑で示す)はφ13の残り一方の穴により決まるのですが、ここでは回転方向の自由度を規制するのみで平面の交点位置はデータムBを決めた穴中心です。
この他にも、3平面データムの構築は、数々あります。ここでは説明しきれないくらいの事例がありますが、私どものセミナーでは、豊富な事例紹介をするとともに、図面指導会として、実際の設計の場面にうかがって、実例を基に公差記入の仕方とともに協力をさせていただいております。
今回は、データムの設定までを測定視点で説明しました。次回以降に、いよいよ設定したデータムをもとにした各種幾何公差の測定の説明をしたいと思います。
筆者紹介
木下悟志(きのした・さとし)
プラーナー 研修推進室 室長 シニアコンサルタント。セイコーエプソンにて34年間勤務。プラスチック応用の開発経験が長く、非球面レンズや超小型ギヤードモーターの開発から量産、マーケッティングまで経験した。また基幹商品であるウオッチ、インクジェットプリンタ、プロジェクターの要素開発にも長く関わった。近年は研究開発部門のマネジメントにおいて開発の意思決定や外部との共同研究・共同開発の方向付けをした。材料開発、機構設計、プロセス開発、計測技術開発と幅広い知見を持つ。2015年より、設計者の能力開発を支援するプラーナーのシニアコンサルタントとして、幾何公差と計測技術を融合したセミナーを創出し、担当している。大手企業をメインに多数の企業で連日セミナーを担当し、実践コンサルも行っている。
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