データムの測定はどうすればいいの?:寸法を実感する! 測定講座(3)(4/5 ページ)
幾何公差や寸法測定の課題に対する幾つかの取り組みを紹介していく本連載。第3回はいよいよデータムの測定について解説する。
データム対象の形体
次に、データム対象の形体を何にするか説明します。図7をご覧ください。
実は設計図面に指示されたデータムはあくまで理想的な平面や円筒などであり、実際の部品では加工誤差や変形などがあって、存在しないものです。そこで、加工者や測定者が考えるのが、データム形体か実用データム形体のどちらを選択するかです。
具体的には、例えば3次元測定機で、ワークを底面(図7の定盤接触面)を基準とした平行度を測定する場合に、定盤面に測定プローブを当てて測定した面をデータムとする場合が「実用データム形体」、ワークの底面に測定プローブを当てて測定した面をデータムとする場合が「データム形体」となります。それぞれ最低3点測定することで面の定義ができますが、測定点の数は、その面の精度や表面性状により決められます。実は、こういったことは、従来は現場で作業する方が独自の判断で行っている例が多かったと筆者は記憶しています。
中心軸、中心平面のデータム実例
ここまで来ると、幾何公差に関して「食わず嫌い」であった、物づくり現場の方々は、「俺たちは今までも、このどっちを使うかを考えながら仕事してきたんだよ。ようやく設計者も考えてくれるようになるんだな」って思うでしょうね。
そうなのです、幾何公差は今まで現場の人々がその都度設計者に確認していた、基準の曖昧さを解消することができるのです。一方、一任されていて曖昧なまま進めることができた点が明確になることで、今まで良品だった部品が不良品になるケースもあるでしょう。
データムというと、一般的に面を設定するイメージが大きいと思います。実は、データムの設定では中心軸とか中心平面を使う機会が多いのです。図8にその実例を示します。ここで重要な点は、形体表面ではなく寸法線にデータム記号を指示することで、中心軸や中心平面が対象であることを示します。
これは、従来の概念だと架空の空間に基準を設けるという違和感があるかもしれません。しかし考えてみてください。例えば、金型を用いて成形する射出成形品などの場合、必ず抜きテーパーというものを設定しませんか。その場合に穴、軸の外形面や、右の図の切欠き部の端面などをデータムにすると、その傾きを考慮する必要があるばかりか、データム同士の直交性の設定に課題が残ります。
そこで、図8のように中心軸や中心平面をデータムとして設定すれば、外形形体にどんな傾斜が設定されようが、中心軸や中心平面は不変であるからデータムの直交性は担保されることになります。従って、幾何公差を有効に運用するためには、こういった中心軸、中心平面を使うケースが多くなるはずです。これは、中心軸や中心平面は、決して架空空間ではなく、現実的な形体と認識してください。ぜひ、覚えておいてください。
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