トヨタが工場内ネットワークでEtherCATを全面採用、サプライヤーにも対応要請:ハノーバーメッセ2016(2/2 ページ)
トヨタ自動車は、ハノーバーメッセ2016において、工場内の産業用ネットワークとしてEtherCATを全面採用する。既に2016年3月に国内のサプライヤーには対応を要請しているが、グローバルサプライヤーについても対応を求めていく。
電力と通信を1本で行える新規格がきっかけに
さらに、全面採用の大きなきっかけとなったのが、EtherCATの新規格として審議が開始された「EtherCAT P」であるという。「EtherCAT P」は、1本のケーブルで通信だけでなく電源供給も可能としたことが特徴で、2系統が必要だった従来に対し、省線化が実現でき、コストの削減と設置スペースの削減が可能となる。同技術はベッコフが開発しETGに提案し、ETGで現在標準化に向け審議がスタートしているところである。2016年9月には仕様書ができるとしている。
大倉氏は「EtherCAT Pで実現できる省線化は、当社が進めるリーン生産やTPS(トヨタ生産方式)などの方向性と一致する。何より線が減らせれば機器の故障を減らすことができ、機器や工場の稼働率を上げることができる。こうした新しい技術を取り込めることがEtherCATを全面採用した理由だ」と語る。
グローバルサプライヤーに対応を要請
トヨタでは今後、新設の工場を中心にEtherCAT採用を加速させる方針。既設についてもベッコフの支援などを得ながら、徐々に対応を進めていくとしている。関連サプライヤーについても既に2016年3月には国内企業については、対応を要請したとしている。「グローバルでもサプライヤー企業に対しては対応を求めていく。対応が難しい中小企業などについては支援なども今後検討していく」(大倉氏)としている。
大倉氏は「日本であるとかドイツであるとかではなく、良い技術を採用して使い、良い製品や良い社会を作ることがメーカーとしての役割だ。新しい技術を積極的に採用することで競争力を強化していく」と述べている。
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