ウェアラブルはセンシングに勝機、メガネで禅の境地へ
メガネ型ウェアラブル端末「JINS MEME」に、「集中力を測る」「集中力を高める」アプリが登場した。開発元のジェイアイエヌでは“ヒトの状態把握”を鍵にウェアラブルを展開する。
ジェイアイエヌは2016年4月13日、体の状態を感知するセンサーを搭載したメガネ(ウェアラブル端末)「JINS MEME」用の新アプリケーション「JINS MEME OFFICE」「JINS MEME ZEN」「JINS MEME WALK」を発表した。いずれもスマートフォンアプリで、App Storeから無料ダウンロードできる。
JINS MEMEは、まばたきや視線移動、体の動きを検出するセンサーが搭載された“センシング・アイウェア”とも呼べる製品で、3点式眼電位センサーと6軸センサー(加速度/ジャイロセンサー含む)を搭載する「JINS MEME ES」と6軸センサーのみを搭載する「JINS MEME MT」の2モデルを2015年11月より販売している。
新アプリケーションはJINS MEMEを装着することで得られる身体情報(状態)の可視化を行い、そのデータを元にしたトレーニングを促す。「JINS MEME OFFICE」は作業への集中を計測するもので、「JINS MEME ZEN」は集中力を鍛える冥想トレーニング用。「JINS MEME WALK」はウオーキングの姿勢や歩幅などを計測し、スマートフォンの画面に表示するものだ(「OFFICE」と「ZEN」JINS MEME ESのみ対応)。
集中状態についてJINS MEMEでは、眼電位センサーにて測定できる「まばたきの回数」と「まばたきの強度(まばたきの性質)」をもとに測定している。これは「集中するとまばたきが減る」「集中が深くなるとまばたきの性質が変わる」という相関関係に基づくもので、脳波や血中成分の測定に近い結果を推定できるとしている。
スポーツ選手などが極めて高い集中力を発揮している状態を“ゾーン”と呼ぶことがあるが、新アプリケーションのOFFICEとZENはこのゾーンを可視化し、装着者のパフォーマンスを高めることを目的とする。このゾーンに入るためには、適切な目標設定と行動からのフィードバックが重要とされており、「集中状態の可視化」はこのフィードバック取得を容易にするものといえる。
新アプリケーションの発表会にゲストとして登場した元オリンピック選手の為末大氏は「陸上競技では秒数としてフィードバックを得られるが、クリエーターやオフィスワーカー、ビジネスマンなどにはそうした可視化がないので、JINS MEMEによる集中の可視化は意味を持つのではないか」と陸上競技からビジネスへ活躍の場を移した自身の経験を元に語る。
メガネ型ウェアラブル端末は現在、生産現場における作業効率化や技能伝承などの目的で徐々にB2Bでの導入が進んでいるが、JINS MEMEのようなB2C製品はビジネス的に見れば「まだまだ厳しい」(ジェイアイエヌ JINS MEMEグループ Mindfullness研究リーダー 井上一鷹氏)状態だ。
しかし、企業におけるメンタルチェック義務化や腕時計型活動量計の浸透など、“ヒトの状態把握”に対する需要や認知は高まっている。ジェイアイエヌでもJINS MEMEについて、フィットネスジムでの活用や認知症対策アプリケーションの開発など、センシングデバイスとしての存在を軸にした展開を狙う。
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