ドローンにセキュア通信技術を組み込んで自動配送、NICTが実験:ドローンにOPT
情報通信研究機構(NICT)がドローンを用いて、図書室の本を別の学校に配送する図書配送システムの実証実験に成功した。ドローンにはOPTによる通信暗号化を施し、「安全な配送」の実現に近づいた。
情報通信研究機構(NICT)がドローンを用いて、図書室の本を別の学校に配送する図書配送システムの実証実験に成功した。2016年4月11日に秋田県仙北市にて、ドローンへ約1kgの図書を搭載し、約1.2kmを自律飛行した。
実験はドローンと地上局の間を結ぶ無線通信の安全性確保を実証するために行われた。飛行体であるドローンと地上局、図書館端末、配送管理端末、サーバとそれぞれを結ぶ通信に対してAES方式の共通鍵とワンタイムパッド(OTP:one-time pad)暗号が適用された。ドローン本体についてはプロドローンが協力した。
システム中でも強度の高い暗号化が求められるドローンとその制御を担う地上局間は、OTPによる暗号化が適用されており、ドローンには実験用に開発されたOTP暗号化装置が搭載されている。NICTではこれらの施策によって、制御信号の乗っ取りや情報漏えいを完全に防御した環境でドローンによる配送サービスが実施できることを実証したとしている。
OPTは平文と同じかそれ以上の長さの使い捨て乱数文字列を鍵とする暗号化方式であり、乱数列を使い捨てにすることによって、同じ平文であっても同じ暗号が生成されないという特徴があり、原理的に乱数列(鍵情報)がない限り解読できないため高い強度を持つといわれる。
NICTとプロドローンは今後も仙北市で行われる実証実験に引き続き参加し、運用技術やノウハウを蓄積するとともに、図書配送システムについてはオペレーターレスでの完全自動航行を目指すとしている。
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