「他に何ができる?」の答えがない人に限って、インダストリー4.0を否定する:IVI公開シンポジウム2016(2)(2/4 ページ)
日本版の「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は設立から約1年を迎え、これまでの取り組みの成果をシンポジウムで発表した。本連載では、同シンポジウムの内容を取り上げていく。今回はIVIの活動にも影響を与える、ドイツのインダストリー4.0の動向を説明した、IVIエバンジェリストであるアクセル・ザーレック氏およびベッコフオートメーション川野俊充氏の講演内容について紹介する。
インダストリー4.0で必要となる変化
ザーレック氏はインダストリー4.0で実現したい姿を目指す場合、製造業の工場における情報システムの構造は従来のピラミッド型のシステムアーキテクチャから各階層が統合されたネットワーク型の分散アーキテクチャに変化すると指摘する。
ただ、新規アーキテクチャになったとしても、必要な構成要素はほぼ出そろっている。重要になるのはこれらを組み合わせてどのように最適化するかという点である。ザーレック氏は「『リファレンスモデル』『適切なセキュリティコンセプト』『円滑なインテグレーション』の3つのポイントが今後の最重要課題となるだろう」と述べている。
これらの動きは既にインダストリー4.0の活動の中でも既に進められており2015年に公開された「インダストリー4.0実践戦略」では、インダストリー4.0のリファレンスモデルとして「Reference Architecture Model Industrie 4.0(RAMI4.0)」が公開されたことで注目を集めている※)。
※)関連記事:インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開
実現に向けては、このリファレンスモデルに合わせて、あらゆるレイヤーでのオンデマンドの通信やインタフェースの高度な標準化、多段階でのマイグレーションプランなどが必要となり「とにかくインダストリー4.0を実装するにはまだまだ多くの時間が必要になる」とザーレック氏は述べている。
その上で、ザーレック氏は「成功のカギはマイグレーションのための戦略とツールとサービスとなる。また標準化がインダストリー4.0のコアコンセプトだ」と述べている。
インダストリー4.0における標準化
インダストリー4.0における標準化活動は、既にIEC(国際電気標準会議)におけるドイツのメンバー(DKE)がテクニカルシステムおよび、テクニカル、組織、ライフサイクルの各プロセスにおける標準リファレンスモデルの構築に取り組んでいる。一方で、インダストリー4.0を実現するための現実的な仕組みとして実践戦略で打ち出したのが管理シェルとしての「インダストリー4.0コンポーネント」である。
インダストリー4.0は全く新しい環境を一から構築するわけではなく、既存の設備などを生かしつつこれらの理想とする姿を実現していかなければならない。現在、工場の中などでは、接続機能がなくシステム構成などもバラバラのシステムがそれぞれ稼働しているが、これらを接続してデータ連携を行わなければメリットを得ることが難しい。そこで、それぞれの機器やシステムの機能を維持した上で、これらをシームレスに接続できるように、間に「管理シェル」を挟むことで相互連携を行えるようにするのが「インダストリー4.0コンポーネント」である。この管理シェルを実現することで容易なシステム移行を実現することを目指している。
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