「他に何ができる?」の答えがない人に限って、インダストリー4.0を否定する:IVI公開シンポジウム2016(2)(1/4 ページ)
日本版の「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は設立から約1年を迎え、これまでの取り組みの成果をシンポジウムで発表した。本連載では、同シンポジウムの内容を取り上げていく。今回はIVIの活動にも影響を与える、ドイツのインダストリー4.0の動向を説明した、IVIエバンジェリストであるアクセル・ザーレック氏およびベッコフオートメーション川野俊充氏の講演内容について紹介する。
第1回「『緩やかな標準』から『プラットフォーム』へ、IVIの新たな挑戦」
2015年に6月に活動を本格化させた「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、活動開始から約1年を経過し2016年3月10日に「IVI公開シンポジウム2016 - Spring -」を開催。20のワーキンググループ活動などIVIのここまでの活動内容を、4つのセッションでまとめて紹介した他、2016年度の活動の方向性などについて説明した。
本稿ではその中で、IVI活動をグローバルに紹介するエバンジェリスト(伝道師)の役割を担う元SAPのアクセル・ザーレック(Dr Axel H Saleck)氏と、ドイツのベッコフオートメーションの日本法人社長である川野俊充氏による「ドイツ最新情報レポート〜インダストリー4.0の動向〜」の講演内容についてお伝えする。
インダストリー4.0が実現する3つのビジネス価値
ザーレック氏はドイツのITシステム大手のSAPでインダストリー4.0(I4.0)に深く関わった人物で、SAPにおけるデモ生産ラインの構築などで主導的に取り組んだという。現在はITコンサルタントとして活動を行っているが、IVIの活動を世界に発信するエバンジェリストとしての役割を担っている。
既に日本の製造業の間ではドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0は大きな注目を集めており理解が進んでいる※)が、ザーレック氏は期待されるビジネス価値としてあらためて3つのポイントを紹介する。
※)関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?
1つ目が「マスカスタマイゼーション」である。これはドイツでは「Lotsize 1(ロットサイズワン)」と呼ばれているが、最終製品の個別生産である。製品設計と柔軟な生産体制のシームレスな統合により、製造ラインで異なる製品を個別に製造可能となる。「インダストリー4.0で推進されているインタフェースの標準化における最も大きなメリットだと考えられている」とザーレック氏は述べている。
2つ目が、「Product as a Service」である。製造業として製品をモノとして提供するのではなく製品のもたらす価値を切り離してサービスとして提供するという考え方である。その代表例の1つである製品の予防保全サービスなどは既に実現しているところもあるが、インダストリー4.0およびIoT(Internet of Things、モノのインターネット)関連技術の汎用化により実現へのハードルが下がると見られている。
3つ目が「業務プロセスの革新」である。IoTを活用した価値ある新規業務プロセスを考案し実装することで新たな価値や効率化を実現することが可能となる。
ザーレック氏は「実現には、とにかく多くの技術の標準化やマイグレーション(移行)のための手法やツールが必要になり、多くの時間が必要だ」と述べている。
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