車輪なしでどうやって移動する?ローバー「ミネルバ2」の仕組み(後編):次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(12)(1/3 ページ)
小惑星リュウグウを目指す「はやぶさ2」に搭載された、ローバー(探査車)が「ミネルバ2」だ。小惑星の表面に降り立ち、調査する使命を持ったミネルバ2の全貌に迫る。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載されたローバー「ミネルバ2(MINERVA-II)」。前編では、ミネルバ2の3台のローバーの中の2台、「ローバー1A」と「同1B」について、概要を説明した。後編となる今回は、この双子のローバー1A/1Bの仕組みについて、より具体的に見ていくことにしよう。
ローバーのハードウェア構成
ローバー1A/1Bは、バウムクーヘンのような平べったい円柱形の小型ローバーである。大きさは直径18cm×高さ7cm、重さは1.1kgしかないが、この中に各種センサー、移動機構、通信機、計算機、電源などが搭載されており、自律的に小惑星表面を移動しながら、地表の様子を観測できるようになっている。
観測カメラとしては、ステレオカメラと広角カメラの2種類が搭載されている。初代ミネルバと同じように、ミネルバ2も小惑星表面をぴょんぴょんとホップしながら移動する方式を採用しており、着地しているときには、ステレオカメラで近くを立体的に見て、ホップ中には、広角カメラで広い範囲を撮影する。
初代ミネルバでは、観測カメラとしてソニー製のUSBカメラが使われたことが話題になった。ミネルバ2でも、民生品のカメラを活用しており、放射線等の環境試験を行った上で搭載したそうだ。解像度はVGA(640×480画素)。
ローバーの各方向にはフォトダイオードが搭載されており、どちら側に太陽があるか推定することができる。この計測値の動きから、ローバーが静止しているのか、それともホップ後にまだ回転しているのか、判断することも可能だ。
その他にも観測センサーとして、ローバーの上下にあるトゲには、温度計と電位差計が搭載されている。ローバーの影になった場所の温度変化を調べることで、小惑星表面の熱慣性を測定するような使い方ができる。
ローバー本体には太陽電池がびっしり貼られているが、それでも2W程度の発電能力しかない。このくらいの電力でも、CPUを動かすくらいなら問題ないものの、ホップ用のDCモーターを回すようなことはできない。瞬時的な電力不足に対応するためには、充放電可能なバッテリーを搭載するしかない。
ミネルバ2では、バッテリーとして電気二重層コンデンサーが搭載されている。これに決まったのは、電気回路が単純で小型化に向いているという特徴があったから。宇宙では世界で初めて、初代ミネルバに搭載され、正常に動作したという実績もある。なおバッテリーの容量は、初代ミネルバから倍増しているそうだ。
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