ニュース
統計の食わず嫌いを直そう(その11)、5分で残存バグ数を予測する方法:山浦恒央の“くみこみ”な話(83)(4/4 ページ)
「回帰分析」は統計分析の有力な手法であり、Excelさえあれば5分で統計的に根拠のある数字を出せます。今回はExcelのツールを使って簡単に残存バグ数を予測する方法を解説します。
5.終わりに
ソフトウェア開発で最も面倒な作業がテストです。
より効果的なテストを実施するために、残存バグ予測式からテスト終了条件が分かると便利です。今回は、回帰分析を用いた残存バグ予測式の導出方法を紹介しました。予測式の作成によって効果的なテスト戦略が期待できます。
万能に見える回帰分析ですが、あくまで予測です。予測通り進むとは限りません。というより、目安と考えた方が良いでしょう。本例には、以下の問題点があります。
- コード行数とバグ数に本当に関係性があるか示していない。
- ソースコード行数以外の項目を考慮していない。
- データ同士が疑似的に関係しているだけかもしれない(回帰分析の最大の問題点)。
- 予測式の信頼性がどの程度か示されていない。
よって、本コラムを出発点として、より高精度な予測式の作成方法を模索してみてください。「統計の食わず嫌いを直そう」の最終回まで読み進めた皆さんに花粉アレルギーはあっても、統計アレルギーはないはずです。本シリーズで取り上げた関連書籍をさらに活用し、工学的なアプローチを試みてください。
参考文献
『統計と確率ケーススタディ30-基礎知識と実践的な分析手法』(ニュートンムック Newton別冊、2014年、ニュートンプレス)
『ソフトウェアメトリクス統計分析入門―現場エンジニアによる直観的解説と実践ドリル』 小池利和 著、2015年、日科技連出版社
『らくらく図解 統計分析教室』 (菅民郎 著、2006年、オーム社)
【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)
東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)
1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科准教授、2016年より非常勤講師。
主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。
関連記事
- 統計の食わず嫌いを直そう(その10)、ワインを飲まずに品質を予測する方法
統計アレルギーの解消には、身近な分野で考えてみることも大切です。今回は「ワインを飲まずに、ワインの品質を予測する方法」を例に統計に触れてみましょう。 - 統計の食わず嫌いを直そう(その9)、昼休みにタダで統計分析をする方法
「統計分析」と聞くと面倒な感じですが、何を証明するか明確ならExcelで簡単にこなせます。Excelさえあれば追加費用はかからず、しかもランチタイムに終わるほどカンタンなのです。 - 統計の食わず嫌いを直そう(その8)、統計的に「王様の耳はロバの耳」と言うために
「王様の耳はロバの耳」と統計的に判定するには、どうすればいいのでしょうか?ロバの耳かも?という仮説を“検定”するための基本的な考え方を学びます。 - 統計の食わず嫌いを直そう(その7)、「鎌倉時代の平均ワイン消費量」と「平均値の検定」
「効果がある」と言うためには比較が必要です。新旧開発プロセスの生産性や品質の平均値を比べるためには、「平均値の差の検定」が必要となります。 - 食わず嫌いを直そう、朝顔の観察日記とデータ収集(その6)
難しそうな「統計」ですが、データの分析以上に重要なのが「収集」です。今回は、統計分析の前段階に相当する「データを集める」という部分に焦点を当てて解説します。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.