建築に製造業や映像産業の成功パターンを持ちこむオートデスク:BIM/CAD
オートデスクは建築・土木向けインフラ分野の事業説明会を開催。建築業にもテクノロジーによる「つながりの時代」が来ているとし、製造業や映像産業などでのノウハウを生かし、建築産業の業務プロセス改革を支援していく方針を示した。
オートデスクは2016年3月22日、建築・土木向けインフラ分野の事業説明会を開催。テクノロジーの変革により設計から施工、管理までの工程が全てデータ連携をする「つながりの時代」を迎えるとし、BIM(Building Information Modeling)を中心とした情報基盤による業務プロセス革新に取り組んでいく方針を示している。
オートデスクでは、CADを基軸とし製造業や建築業、映像制作業などに向けた製作ツールを約30年にわたって提供し続けてきたが、テクノロジーの進化により現在は3つ目の変化の時代を迎えているという。
オートデスク インダストリー ストラテジー&マーケティング AEC ビジネスデベロップマネージャーの内山敏昭氏は「CADによりPC上で2次元図面を扱えるようになった最初のテクノロジーによる変革が『図面化の時代』だ。これが3次元化とシミュレーションの活用による『最適化の時代』へと移った。現在進んでいるのが『つながりの時代』だ」と述べる。
「つながりの時代」とは、製品単体のデザインだけでなく、さまざまな工程など、人とテクノロジーがつながる時代を示す。また、ワークフロー全体がつながることにより、全体の業務プロセスの最適化を行える。さらにクラウドコンピューティングやモバイル対応、ドローンやロボット、IoTの活用など、新しいテクノロジーとつながるソリューションの提供なども含むという。
これらの情報基盤として期待されているのがBIMである。BIMとはPC上に作成した3次元の建築デジタルモデルに、コストや管理情報などの属性情報を追加し建築物のライフサイクル情報を管理できるツールである。建築の設計から施工、維持管理までのあらゆる工程での情報管理基盤となり、建築業務プロセスの最適化を進めるツールとして期待されている。
ただ、海外ではBIMの浸透は進んでいるものの国内では「2005年から10年経過したが浸透はまだ途上だ」(内山氏)とする。要因として内山氏は主に2つのポイントを挙げる。
「日本特有の建築業の商習慣が1つ目の要因だ。設計、施工のプロセスにおいて、海外では設計段階で詳細に情報を作り込み施工に引き渡すが、日本では施工現場の力が強く、詳細な情報がなくても施工現場で図面を引いて品質が確保された建物が作れてしまう。そのため設計側から詳細な情報を施工側に引き渡す必要がないという認識がある」と内山氏は課題を指摘する。さらに「2つ目が、施工主側がBIMを管理に使う場合に、コスト削減に対する費用対効果を疑問視している点だ」(内山氏)としている。
これらに対する取り組みとしては「大手ゼネコンのBIM推進室のような専門部署や、以前からつながりが強い設計部門だけでなく、施工系の部門への提案を強化する。さらにBIMの本来の役割である業務プロセス改革などに活用するためには、各部門の管理者クラスに草の根的にアプローチを進めていきたい」と内山氏は述べている。
この流れのもと、施工系の提案のポイントとして挙げるのがクラウドとモバイル対応だ。オートデスクでは、製造業系での提案と同様に、建築系でもあらゆるアプリケーションのクラウド対応を推進。これによりモバイル対応も可能とし、現場での作業が80%を占めるという施工系の業務でも情報共有ができるようにした。さらに永久ライセンス契約からサブスクリプションモデルへと転換することで、契約の柔軟性を持てるようにしている。
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