3次元設計を活用した「実証実験型オフィス」に潜入!:メカ設計ニュース
NTTファシリティーズは、同社の新たなR&D開発拠点「NTTファシリティーズ新大橋ビル」(東京都墨田区)の内覧会を開催。同社はこのビルを「実証実験型オフィス」と位置付け、実際にオフィスとして運用しながら研究開発中のさまざまな技術を検証していくという。
NTTファシリティーズは2014年7月30日、同社の新たなR&D開発拠点となる「NTTファシリティーズ新大橋ビル(以下、新大橋ビル)」(東京都墨田区)の内覧会を行った。同社はこの新大橋ビルを「実証実験型オフィス」と位置付け、地熱やサーバの排気熱といった未利用エネルギーの活用や、オフィスの天井に設置したセンサーで社員の位置情報を把握し、照明や空調の自動制御を行うシステムなど、同社が研究開発中のさまざまな技術を実際にオフィスとして運用しならが検証する。
BIMとFMの連携でライフサイクルコストを削減
新大橋ビルは、ビルディング・インフォメーション・モデル(以下、BIM)という手法で建造されている。これは建築物の設計段階で3次元のデジタルモデルを作成し、そこにコストや管理情報などの属性データを追加したデータベースを、建物の設計や施工、維持管理までのあらゆる工程で活用するものだ。
新大橋ビルの大きな特徴は、BIMと建物の効率的な運用管理手法であるファシリティマネジメント(以下、FM)を連携させている点だ。ビルの設計や施工と並行しながらFMの導入を検討し、BIMデータにビルの維持管理や運営に必要な情報を加えている。これにより、建物のライフサイクルコストが3次元データとして「見える化」され、建物が完成する前にビルの維持管理や運営の視点で設計を検討できる。ビルの改修や、故障対応といった将来的に発生するコストを早い段階からシミュレーションできるため、長期的なコストの削減につながるという。
NTTファシリティーズ 研究開発本部長の植草常雄氏は「この新大橋ビルは、研究開発を可視化、加速化、高度化することを目的に建てられている。設計から施工までの全ての過程でBIMを活用し、FMと連携させたのは世界初の試み。これにより、例えばビルの一部を修理する場合、3次元データを利用して図面を使わずにシミュレーションを行うことが可能になる。このBIMとFMを連携によって建物のライフライクルコストを20%削減できる」と語った。
スマートフォンとBeaconで位置情報を分析
新大橋ビルのオフィスはシンクライアント型で、各フロアのデスクなどにはPCのディスプレイだけが設置されており、データは全て1階にあるデータセンターで一元管理されている。オフィスの天井部分にはBeaconが設置されており、社員が携帯しているスマートフォンから位置情報を取得できるようになっている。スマートフォンのアプリケーションを使用して照明や空調の制御を行うことも可能だ。今後、同社はオフィス内での人の動きを解析し、快適なオフィスの設計に活用していくという。
エネルギーコストの削減にも注力
ビル内での効率的なエネルギー運用についても、多くの技術が投入された。新大橋ビルには、地中熱やサーバの排熱といった未利用エネルギーを活用するシステムが導入されている。屋上には太陽光パネルが設置されており、再生可能エネルギーも利用する。このようなシステムを採用することで、ビルの構築段階でエネルギーコストを40%削減できるという。
ビルの運用段階でのエネルギーコストを削減するシステムも導入されている。新大橋ビルは、特定規模電気事業者から購入する電力と、太陽光パネルで生成し、地下に設置した難燃性リチウムイオン電池に貯蔵される2つの電力を利用する。太陽光パネルでの発電量や、ビル全体での電力の需要量予測に基づき、蓄電池の充放電とデマンドレスポンスによるピークカット・シフトを行うことで効率的に電力を運用していく。また、センサーで収集したビル内の人の位置情報を、空調や照明の制御システムと連動させることで無駄なく電力を利用する。NTTファシリティーズは、こうしたシステムで新大橋ビルの運用段階でのエネルギーコストを、35%削減することを目標にしているという。
その他、ビル内に設置された各センサーにより、地震などの災害が発生した場合、瞬時に建物の安全度を判断できるシステムも導入されている。また、新大橋ビルは、停電した場合でも電力を48時間供給することが可能だ。
同社は今後、この新大橋ビルで実証実験をさらに進め、将来的に事業化を目指す方針だ。
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