今夏を乗り切る方法を考えよう――大容量蓄電池で何ができるのか:スマートグリッド
2012年の夏、電力の需給はどうなるのだろうか。供給量の増強が果たして需要を十分に賄えるのか。はっきりしたことは分からない。だが、企業には何らかの対策が必要だ。省エネから一歩進もうとすると、次は蓄電だろう。大和ハウス工業は社内に1000台の大容量蓄電池を配置する。
国内で営業運転中の発電用原子炉がとうとう1基にまで減ってしまった*1)。2012年5月5日にはゼロになる可能性もある。2012年の夏(6〜8月)の平均気温は、気象庁が2012年2月23日に発表した季節予報によれば、平年よりも高くなる。特に西日本の気温が高くなるようだ。発電量が減り、気温が上がるとどうなるか。電力が不足する可能性がある。
*1) 東京電力の柏崎刈羽原子力発電所6号機が3月25日に営業運転を停止し、定期検査に入る。現在は北海道電力の泊原子力発電所3号機のみが営業運転を続けている。
2011年の夏は、照明を間引き、空調温度を調整することで乗り切った家庭や企業が多いだろう。2012年の夏はどうすればよいのか。節電に加えて、大容量蓄電池を導入する手法が現実的になってきた。
社内に1000台の蓄電池を配置
大和ハウス工業は2012年3月26日、電力不足への対応と省エネを実現するために、グループ社内に大容量蓄電池1000台を分散配備することを発表した。
容量2kWhの蓄電池を事務所や工場など約200事業所に配置、最大2MWhのピークシフトを実現する。2012年4月10日から開始し、4月中に完了する計画だ。同社は関西電力管内の電力不足を特に懸念しており、同管内の事業所に1.2MWh分(600台)を配置する(図1)。1000台の蓄電池を社内の約1万人で利用する。
午後11時から翌日午前7時までの8時間を使って深夜電力で充電し、電力需要がピークとなる午後1時から午後6時までの5時間、ノートPC(消費電力20W)と卓上LED照明(同10W)に供給する(図2)。停電時のバックアップ電源としても活用するという。
これにより約5%のピークカットが見込めると同社は予測している。
配置するのはエリーパワーが製造するリチウムイオン二次電池採用の「パワーイレ」(図3)だ*2)。
*2) パワーイレは法人向けにリース販売の形で提供されている。契約期間は5年リース、月額3万6000円である。なお、大和ハウス工業は2011年4月からパワーイレと可搬式太陽電池モジュールを組み合わせた移動用や停電用の発電装置「SOLAR STORAGE」も販売している。出力520Wの太陽電池モジュールとパワーイレ(容量2kWh)を組み合わせたものだ。価格は252万円。
図3 大容量蓄電池「パワーイレ」 交流100Vのコンセントに接続して充電できる。出力容量は最大1000W(交流100V×2口のコンセント)。容量は2kWh。寸法は幅320mm×奥行き550mm×高さ702mm。重量は約62kg。出典:大和ハウス工業
なお、大和ハウスグループでは、2011年の夏場の電力不足に対応するため、各施設にエネルギーモニタリングシステムを導入した他、LED照明と高効率反射板を組み合わせて、平日の使用最大電力(ピーク消費電力)を24%カットしたという。2012年の夏はパワーイレを導入することでピークカットを進める形だ。
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