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トヨタとヤンマーの新型船開発は異例の短期計画、「挑戦的でやりがいあった」:メカ設計ニュース(2/2 ページ)
トヨタ自動車とヤンマーは、「ジャパンインターナショナルボートショー2016」で、2016年3月1日に両社が発表したマリン事業の提携について説明。共同開発した船体(ハル)を用いた小型艇を同年10月に商品化するが、「造船業界にとっては異例の短期開発計画だった」(ヤンマー専務取締役の苅田広氏)という。
鍵はFRPのインフュージョン成形
FRP、炭素繊維、アルミニウムという3種類の素材から構成されるトヨタハイブリッドハルは、FRPハルと比べて7倍の剛性、アルミニウムハルと比べて10%の軽量化を実現している。3素材を組み合わせたハルは、量産タイプの舟艇としては業界初採用になるという。
トヨタハイブリッドハルを実現する上で最も重要だったのが、ヤンマーが国内マリン事業者として初めて認証を得た、FRPのインフュージョン成形である。インフュージョン成形とは、真空圧によって樹脂充てんと含浸を行うクローズドモールドの成形法で、3素材を一体で成形できるメリットがある。
トヨタハイブリッドハルでは、最大応力がかかる船底部分や縦補強材の中間材として発泡材を用いることにより軽量化につなげた。また、高価な炭素繊維は、最も力がかかる波を切る部分にだけ使用することでコストを抑えている。
試験艇のTOYOTA-28 CONCEPTは、このトヨタハイブリッドハルに加えて、トヨタ自動車が「ランドクルーザープラド」に採用しているディーゼルエンジンをマリン向けに最適化した最高出力260psの「M1KD-VH」と、ヤンマーの二重反転プロペラを用いたドライブユニットを搭載。「トヨタの中型アルミ艇『フォーナム』と同等の乗り心地を実現した」(苅田氏)という。
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