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トヨタは船舶の船体も“ハイブリッド”、FRP比で剛性は7倍にメカ設計ニュース

トヨタ自動車とヤンマーは、マリン事業での業務提携に基本合意したと発表した。協業の第1弾は複合素材を用いた船体(ハル)の共同開発で、FRP製と比べて7倍の剛性、アルミニウム製と比べて10%の軽量化を実現した。2016年10月の発売に向けて商品化の準備を進めている。技術開発にとどまらない広範囲な協業も検討している。

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 トヨタ自動車とヤンマーは2016年3月1日、マリン事業での業務提携に基本合意したと発表した。協業の第1弾は複合素材を用いた船体(ハル)の共同開発で、FRP製と比べて7倍の剛性、アルミニウム製と比べて10%の軽量化を実現した。既に試験艇が完成しており、2016年10月の発売に向けて商品化の準備を進めている。技術開発だけでなく、ボート用エンジンの主要部品の相互供給や、共同での商品企画、販売やアフターサービスなど広範囲の協業を検討している。

トヨタ自動車とヤンマーが共同開発した船体を採用している「TOYOTA-28 CONCEPT」
トヨタ自動車とヤンマーが共同開発した船体を採用している「TOYOTA-28 CONCEPT」 (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 トヨタ自動車は、アルミニウム製ハルと自動車用エンジンを組み合わせたプレジャーボートを製造、販売している。ヤンマーは、産業用ディーゼルエンジンのノウハウを生かした船舶用エンジンと、FRP製のハルで設計したフィッシングボートや業務用船舶を生産している。

 アルミ製ハルは高度な加工技術が必要で生産性に課題があった。そのためトヨタ自動車は、アルミと同等以上の剛性があり、生産性向上が見込めるFRP/カーボン/アルミニウムの複合素材によるハルを開発してきた。FRPの成形技術を持つヤンマーの協力により、アルミニウム製ハルと同等の剛性で加工性に優れた船体「トヨタハイブリッドハル」の量産化にめどを付けた。

断面から見た船体構造の違い。新開発のハルは多層構造となっている
断面から見た船体構造の違い。新開発のハルは多層構造となっている (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 トヨタハイブリッドハルはFRPをベースにアルミニウムとカーボン繊維を使用する。空気を抜いた状態で樹脂を型に流し込み、3つの素材を一体成型する真空注入成型で生産する。最大応力のかかる船底は、中間材として発泡材を加えた多層構造としている。従来のアルミニウムの溶接では困難なデザインが可能になるほか、走航安定性の高い船底形状を実現できる。

高い走航安定性を実現する船底形状新開発の船体構造の俯瞰図 高い走航安定性を実現する船底形状(左)と新開発の船体構造の俯瞰図(右) (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 既に、トヨタハイブリッドハルを採用した試験艇「TOYOTA-28 CONCEPT」で従来の同型艇を上回る走破性や旋回性能を確認しているという。高剛性化と軽量化を両立するとともに、走航性能と生産性を同時に改善した。

 TOYOTA-28 CONCEPTはトヨタ自動車が市販化し、2016年10月に発売する予定。トヨタ自動車は生産をヤンマーに委託する。同モデルは「ジャパンインターナショナルボートショー2016」(2016年3月3〜6日開催、パシフィコ横浜)に出展する。

 トヨタ自動車は共同開発したハルでプレジャーボートのラインアップを強化するとともに、船艇の生産能力を増強する。ヤンマーとの協業もさらに拡大する方針。エンジン部品の相互供給や、両社の製品ラインアップの特徴を生かした商品企画、販売などでの提携も検討している。

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